※ 今回は長文です、お時間のあるときに読んで頂ければと思います。
今から40年前に公開されたSF映画、『2010年』の中にこんなシーンがあります。
木星宙域まで到達した宇宙船の中で、忙しい作業の合間に二人のアメリカ人が休憩しています。
彼等は本編とはまったく関係がない、遠く離れた地球のことを話しています。
画面右側が主人公のヘイウッド・フロイド(演:ロイ・シャイダー)、左側は同僚のウォルター・カーナウ(演:ジョン・リスゴー)。
二人の会話はというと……
カーナウ「今、何が恋しいか分かるか?」
カ「緑だ」
カ「木だったり」
カ「草だったり」
カ「緑はいい」
フロイド「ホットドッグも」
カ「アストロドームのがうまい」
フ「屋根つきじゃ、うまくないよ」
フ「9月のヤンキー・スタジアム」
フ「4月の開幕からゆでてるソーセージ」
カ「マスタードは黄色?」
フ「茶色だ」
カ「そうとも」
この映画は以前私がレビューを書いた『2001年宇宙の旅』の続編です。
大好きな映画の続編ですから、当然見に行きました。
そして映画そのものの印象の他に、私にはこのシーンが心に残りました。
その理由はまず、アメリカ映画らしい力の抜けたこのシーンが映画の中でよいアクセントになっていたこと。
そしてもう一つは、マスタードに黄色と茶色があるとするセリフです。
The yellow mustard or the darker one?
Darker.
当時の私は、黄色は普通のマスタードで、茶色は飲食店でソーセージに添えられる粒マスタードだと思ってました。
それから数十年後、今から三年程前にこのシーンのことを思い出して、マスタードについて調べてみたのです。
すると、黄色はともかく茶色は別物だということが分かりました。
(粒マスタードはドイツのものですから、アメリカのスタジアムにあるのは不自然です)
まったくねぇ、「ダーカー」だけじゃ分かんないって(笑)。
アメリカのスタジアムの名物であるホットドッグに使われている黄色いマスタードは、我々日本人もよく知っているものです。
もう一方の茶色のマスタードというのは、黄色いマスタードに似ていますが、色が濃くてツブツブが入っていて、より刺激的なものなのだそうです。
そして黄色よりも茶色のほうが人気があるという声もありました。
(映画と同じですね)
茶色のマスタードは、ブラウン・マスタード(またはスパイシー・ブラウン・マスタード)と呼ばれることが多いようです。
(ブラウン・マスタードシードはまた別物(原料)です)
アメリカは広い国です、国の集まり(合衆国)ですからね。
全米各地にマスタードのメーカーがあって、それぞれがブラウン・マスタードの商品を販売しています。
中身は大体同じらしいですけど、人によっては拘りもあるようです。
ここまで来たら、実際に味わってみたくなるのが人情というもの。
ネットで探してみると、色々な商品が見つかりました。
送料別で安いものだと千円弱、高いものだと一万円超!!
(アメリカからの取り寄せになるらしい)
いやいや、そこまでのものじゃありませんって。
小さめの容器に入った、せいぜい五百円くらいまでのものでいいんです。
(一口で嫌になったらどうするんですか!)
調べていくうちに、日本のメーカーでも出していることが分かりました。
チヨダ株式会社というところが出している「つぶマスタードソース」や「あらびきブラウンマスタード」がそれらしいですね。
チヨダの製品がどこで入手できるのかは不明ですけど、どうせなら米国製のブラウン・マスタードを味わってみたいです。
そこで思い付いたのです、これは遊びになるなと。
ネット通販に頼らず、情報収集も最低限に留めて、自分の足で探してみるのです。
この東京で入手できないわけがないです、そこまで特殊な製品でもないでしょう。
アメリカ人だって大勢住んでいるのですから、需要だってあるし。
街歩きが好きな私は、ブラウン・マスタードを一つのお宝として、のんびり追いかけてみることにしました。
(こういうちょっとした拘りがブロガーっぽいですよねぇ(笑))
高級スーパーならあるかと思い、成城石井に行ってみたけどありませんでした。
(置いている店舗もあるかもしれませんが)
日本橋の明治屋にも行ってみましたが、ここにもありませんでした。
デパートとか大きなスーパーの近くに行ったときには、ちょっと寄って探してみたのですが、発見できませんでした。
そして一年経ち、二年経ち。
でも別に急ぎじゃないし、探すこと自体を楽しんでいたので、全然苦にはなりません。
昨日仕事中に思い付いたのは、アメリカ人が多く住んでいる地域のスーパーに行けばあるんじゃね? ってことです。
(普通ここから考えますよね、まったく、ダメな私ね……)
次の日から連休になるので、帰りに寄り道するチャンスです。
都心だと有名なナショナル麻布、ありそうです。
ただ仕事帰りに寄るには、今の職場からだとちょっとアクセスが悪いから後回し。
あ、そういえば新一の橋の交差点の近く、東麻布にも輸入食品を扱うスーパーがあったよなぁ。
思い出して地図で探してみたら、あったあった、ありましたよ。
日進ワールドデリカテッセン!
そうそう昔、街歩きの途中で寄ったことがあったわ。
ここなら仕事帰りでも何とかなりそうです。
お出掛けするときにはしっかりと下調べをする私ですから、休憩時間にスマホでアクセス方法を調べました。
JR、地下鉄、バス、コミュニティバス、シェアサイクル、徒歩。
これらを使って無理なく行けるか確認して、帰途のルートも楽そうなのが見つかりました。
仕事の後ですから、疲れた体でやたらと乗り換えたりするのは避けたいですよね。
時刻表も確認して、準備万端。
こうなると定時が来るのが待ち遠しいです。
定時になって退社して、これから歩き回るので最初に腹ごしらえ。
次に、港区のコミュニティバスで移動。
日進に向かってちょっと歩きます。
無事にたどり着きました。
お宝がありそうなのは三階です、エスカレーターで上がっていきました。
見慣れないものが沢山置いてあって、異国感がありますね。
そして調味料コーナーへ。
これは帰宅してから見付けたのですけど、GoogleMapのストリートビューで店内を見ることが出来ます。
おおっ、あるある!
画像でしか見たことのなかったマスタードがここにありました。
中央に写っている、縦型で尖ったキャップが付いているもの(とその左の瓶)が、探していた米国製のマスタードです。
イエローとブラウンとハニー(はちみつ入り)もあります。
いやはやこれ程とは、あるところにはあるものです。
価格は高くても千円弱、私は一番ベーシックなブラウン(¥540、12oz)を購入しました。
ついにゲットです!
(やっぱ遊びにはちゃんとゴールがないとね)
私が購入したブラウン・マスタードがこちら。
これって「フレンチズ」がメーカー名? ブランド名?
「アメリカの味」ってのと繋がらない気がしますが。
調べてみたら「フレンチ」は、ロバート・ティモシー・フレンチさんが創業した食品メーカーだそうで、「フランスの」ではありませんでした。
だから「フレンチ・スパイシー・ブラウン・マスタード」が商品名なのでしょう。
ラベルの赤い旗のマークは昔から使われているそうです。
現在の本社はニュージャージー州チェスターにあります。
(マコーミックのグループ会社です)
「1904年から」ってことは、119年間作ってるわけですね、凄い!
来年は120周年じゃないですか。
「人工香料不使用」ってのは昔ながらってことですかね。
お酢がメインの原材料なんですね。
あれっ、賞味期限は今年の6月!?
結構短命なんだなぁ。
なるほどなるほど。
では実食です。
本当はホットドッグを用意すべきなのでしょうけど、今回はソーセージだけで。
こちらを使用しました。
お湯で茹でて頂きます。
(何ヶ月も茹でて軟らかくするなんて無理っす!)
肝心のブラウン・マスタードの中身はというと……
ブラウンというよりも、グリーンに近いですね。
確かにツブツブも見えています。
酸っぱいお酢の香りが強いです。
実際に食べてみると、普通のマスタード程の辛さはありません。
お酢の酸味が強く、辛さはその裏に少し感じるくらいです。
そしてこれを付けたソーセージが美味しいのですよ。
最後に残ったブラウン・マスタードをそのまま舐めてみましたが、調味料としては刺激はそれほど強くはなかったです。
わさびのように「単体ではちょっと……」というのに比べたら、使いやすいと思います。
賞味期限が迫っているので、今後は肉料理などに積極的に使っていきますよ。
さてさて、個人的にここ数年間遊ばせてもらったネタはこれにて終了です。
もちろんブラウン・マスタードは今後も食卓で使わせて頂きますけど、私の中では一区切り付いた感じです。
たった一品だけ試しただけで、ブラウン・マスタードを制覇したつもりはないのですが、潮時です。
今後もブラウン・マスタードのような良いネタに、もっと出会いたいものです。
今回の記事は本当に長くなってしまいました。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。