アート好きな私ですけど、それでも合わないアートはあります。
何でも全部がOKではないのです。
今回はそんなお話です。
テレビで時々、写真みたいな絵を描く人の作品が紹介されますよね。
水道の蛇口とか本当に良く出来ていて、よくこんな絵が描けるものだと思ってしまいます。
ああいった「写真みたいな絵」は、スーパーリアリズム(またはハイパーリアリズム)にカテゴライズされます。
最初っから写真を見ながらその写真と同じように描くアートなんですね。
つまり、スーパーリアリズムっていうのは模写なのです。
絵画っていうのは2Dですよね。
世界中にある3Dのものを見て、それを2Dに変換してみせる、それが絵画です。
3Dからどう2Dに変換するのか、それが絵画のキモだと私は思います。
これまでに書いてきたように、そこが画家にとっての腕の見せ所です。
19世紀に写真というメディアが登場して、絵画の意味合いも変化してきました。
写実的にそのまま描くのか、自己流で変えてくるのか。
どういう意図がそこに込められていて、見る人の心に何を訴えかけてくるのか。
写真や絵画の模写に、そのキモはないです。
既にカメラが、3Dから2Dへの変換作業は済ませているのですから。
あとは機械的に写すだけ。
ただのテクニック披露です。
私はそこに価値を感じないのですよ。
元になる写真に凝るなら、模写しないでその写真を出せばいいじゃないですか。
そっくりに描いたところで「はいはい、上手ね」で終わりです。
(もちろんお金を取らないアマチュアの趣味ならいいのです)
そういう意味で好きになれない画家がいます。
例えばミュシャ。
日本では主に中高年女性に人気がある画家です。
彼は画家を目指しながら印刷所で働いていて、1895年の年末に画家が出払っているときに急にオーダーが入って、チャンスとばかりに描いたポスターで世に出た人です。
ミュシャは絵を描くとき、写真を用意しました。
自分が描きたい人物と同じ衣装を着せて、同じポーズをとらせて、写真を撮ってその写真を見ながら描きました。
だから彼の描く絵はリアルなのです。
ミュシャは画家ではなくイラストレーターでした。
3Dから2Dへの変換なんて興味なかったのでしょう。
もう一人、挙げておきます。
その人の名は、ノーマン・ロックウェルです。
アメリカでは非常に人気のある画家で、戦中戦後に活躍しました。
彼の主な活動拠点は「サタデーイブニングポスト」という雑誌の表紙でした。
おそらくみなさんも、雑誌の裏表紙の広告などで見たことがあるでしょう。
アメリカ人の共感を呼ぶ、ドラマ性を感じさせる絵が得意でした。
ロックウェルも、写真を見て描いていました。
家族や友人に描きたい絵のキャラの格好をさせて、望むロケーションで撮影した写真を見て描いていたのです。
(元になった写真と描いた作品を見開きの左右のページに並べた画集もある)
ロックウェルも画家ではなく、イラストレーターでした。
別にイラストレーターが画家より下と言いたいわけではないです。
ただ私の好みじゃないというだけのことです。
日本人はなぜ写真のような絵を好むのか。
それはおそらく、日本人が農耕民族だからだと思います。
欧米の狩猟民族と違って、農耕民族は自分たちの所属するグループの和を大切にします。
決まったタイミングで決まった作業をして、収穫をみんなで分けて。
一人だけ違うことなんてやってたら効率が落ちるから、みんなから攻撃されるのです。
それはつまり、個性はダメってこと。
勝手なことをするな、みんなと同じことをしろ。
長年そうしてきた日本人に個性が少ないのは当然のことなのです。
それでピカソの絵なんて受け入れられず、笑い飛ばしたりしてね。
日本では絵は写真のようでないとダメなのです。
全員が同じように理解できる写実的な絵こそがすべて。
写真のようにリアルに描けば、拍手喝采大絶賛。
私が小学生の頃、学校の美術の時間に先生が「今日は自由に絵を描きましょう」と言ったことがありました。
テーマとか決められないのは珍しいから、私はワクワクしながら何を描こうかと考えたのですが。
そのとき教室のあちこちから声が上がり、それじゃ描けない、何を描くか決めてくれと、ちょっとした騒ぎになってしまいました。
結局、教室にある物、人、窓からの景色、それらから選んで描けということになってしまい、私はガッカリでしたよ。
「自由にやれ」と言われると自由にやれない日本人。
決められた枠の中なら活き活きする日本人。
みんなと一緒がいい日本人。
それなのに「自由」や「個性」という言葉が大好きな日本人。
なんだかなー。
千葉県に、ホキ美術館という施設があります。
医療器具メーカーの創業者が自身のコレクションを展示・公開するために作ったものです。
ここはスーパーリアリズム専門だそうで、もし写真みたいな絵を見たければどうぞ。
私は絶対に行きませんけどね。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。