前々回に登場した「ジャパニメーション」という言葉について書きます。
前々回がこちら ↓
実はこの言葉の意味はかなり曖昧で、人によって定義が違ったりするので要注意です。
その上で書きます。
日本で連続テレビアニメ番組が始まったのは、1963年(昭和38年)のことです。
超有名な『鉄腕アトム』ですね。
(単発のテレビアニメはこの前年にあった)
これが大人気で、テレビアニメ(当時はテレビまんが)はあっという間に増えていきました。
一方、アメリカのテレビ事情は日本とは違ってまして。
まず国土が広いです、国の集まり(合衆国)ですからね。
だからテレビ局も物凄く多いし、国(州)ごとに放送のやり方も違います。
日本のように共通したクール(三ヶ月)という放送期間の決まりもありません。
なのでアメリカで作られるテレビ番組っていうのは、昔は何話までっていう長さを最初に決めないで作っていたのです。
(近年は『24』の大ヒットなどがあり、最初から長さ(回数)を決めて作ることが増えた)
それで放送が始まってから、人気があれば予算も増えて続いていくし、人気がなければ打ち切りということになっています。
よく連続ドラマで、回が進んでいくと豪華なゲストが来たり有名なシナリオライターが脚本を書いたりするでしょ?
あれは予算が増えたということです。
そしていつでも打ち切れるように毎回読み切りのストーリーになっていて、日本の朝ドラや大河ドラマのような連続した物語になっていないことが多いのです。
(最終回が妙にアッサリしているのもこのせい)
これなら本放送でも再放送でも、空いた枠にポンっと入れられます。
更に、テレビやCATVなどのチャンネル数が多いアメリカの場合、ドラマを最初から続けて見なくてもすぐ楽しめるように毎回読み切りのストーリーになっているという事情もあります。
これは国民性もあると思うのです、日本だと続き物が好き、アメリカだと単発の物語が好き、みたいな。
テレビアニメ『サザエさん』みたいに基本設定が簡単で分かりやすくて、途中から見ても誰でも楽しめるような番組が、アメリカのテレビでは理想なのでしょうね。
そんなアメリカのテレビ界は、常にソフト不足に悩まされてきました。
チャンネル数が多く、24時間放送の局も多いため、流す番組が足りなくなりがちなのです。
それで海外の番組を買ってきて、自国用に直して放送しています。
日本でテレビアニメが放送されるようになってからは、それも買われるようになりました。
(あの『ウルトラQ』も英語版があって、以前ソフトに特典映像として入っていたことがある)
ただ、日本のテレビアニメはそのままでは放送できません。
セリフは吹き替えますが(アメリカでは他言語の作品で字幕はあまりない)、言葉の問題だけではありません。
まず肌の色。
黄色人種だけっていうのは有り得なくて、肌の色を少し変える必要があります。
エロ要素も当然ダメ。
それから物語。
上記のように毎回読み切りにしないといけませんが、日本のアニメは連続した物語になっているものが多いです。
そのために中身も直してしまうことが多いのです。
これは有名な話ですけど、『宇宙戦艦ヤマト』の場合。
あれは第一回から最後回までで一つの物語になっていて、途中の一話だけ見たって話は分からないですよね。
それがアメリカに輸出されたとき、編集して毎回単発の物語に変えられたのです。
つまり、
「正義の味方のヤマトが宇宙をパトロールしていると、悪いガミラスがいたので戦ってやっつけました、めでたしめでたし」
みたいな感じですね。
元々日本のテレビアニメはそんなに作画の質がいいわけではなくて、それを奥行きのある物語や演出や声優の演技などで補い、楽しめる作品にしているのです。
それを、声を変えて肌の色も変えて、編集しなおして物語を変えてしまったらどうなるか。
下らない駄作と思われても仕方がありません。
アメリカ人はテレビでこういう編集された日本のアニメ番組を見ていて、
「日本のアニメ番組は下らない」
「子供向けのものだ」
という認識を持ってしまいました。
そしてそういう編集後の日本のアニメを、
JAP(英語圏における日本人の蔑称(べっしょう))
+
ANIMATION
から「JAPANIMATION」と名付けたのです。
誤解もいいとこですよね。
前々回に書いたように、『アキラ』『マクロスプラス』『GHOST IN THE SHELL』などの予算多い系のアニメ作品(命名:私)がアメリカでヒットしたとき、どういう経緯か知りませんけど「ジャパニメーション」という言葉を輸入してオシャレな感じで使うように仕掛けた人がいたわけです。
今までとは違う、アメリカ人が認めた上質なアニメ作品を「ジャパニメーション」と呼ぼう! みたいな。
日本人には耳慣れない言葉で、何だか日本製のアニメを持ち上げるカッコいい言葉みたいで「使える!」と思ったのでしょう、本来の意味を知ってか知らずか。
それで1990年代にこの言葉がよく見られたのです。
(『マクロスプラス』のCMでも使われていた)
ところがこの「ジャパニメーション」という言葉は、アメリカでは使われなくなっていきました。
どういうことか。
アメリカでは1980年代から、全国の大学にアニメやマンガのサークルができるようになりました。
アニメの場合、本物のマニアは日本に友人を作り、日本のアニメをVHSに録画して送ってもらったりしていたのです。
そして更にそのビデオに英語の字幕までつけて、サークルで上映会をやったりしてね。
そうやってオリジナルのテレビアニメを見てみると、アメリカのテレビでやっていたものと明らかに違うわけです。
そして日本のテレビアニメの本当の良さに気付くファンがどんどん増えていきました。
彼ら彼女らは、
「日本のテレビアニメはジャパニメーションとは全然違う、これはアニメなんだ!」
と思い、アニメという名称を好んで使うようになったのです。
なので、アメリカでは「JAPANIMATION」という言葉はもうほとんど見られません。
ビデオ売り場では「ANIME」という表記がされています。
(ついでに書くと、日本のエロマンガやエロアニメは「HENTAI」と呼ばれている(← 正しい訳(笑)))
日本でも「ジャパニメーション」という言葉は使われなくなりました。
たまーに勘違いして使っているのを見ることはありますけど、もうレアケースです。
ネットが発達して国際的な交流が簡単になった今、アニメはアニメでしかありません。
(「ジャップ」なんて絶対に言ってはいけません)
一つ不思議なのは。
今は日本のアニメの魅力を知ったファンが世界中にいるわけで、特にフランスは凄いらしいです。
あと日本のアニメは韓国などに下請けに出すことを昔からやっています。
そして海外で作られるアニメ作品が増える中で、我々が海外のアニメを見たときに、
「これは日本製ではないな」
ってすぐ分かりますよね?
日本のアニメが好きなのに、なぜそのテイストを真似することができないのか。
なぜでしょうね?
既にあるのかなぁ。
では最後にひとネタ。

ジ「飛び出しちゃダメだよ、田舎じゃないんだからー」
キ「あスマン、ついな」

母「あなた!」
父「分かってるわよ、ついよ、つい!」
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。