スプーキーじいさんって何考えてるの!?

貧乏・暇なし・不健康。一人暮らしのじいさんのブログです。このブログに広告とか金儲けは入っていません。スターは一個だけ付ける主義です。

夢のパワードスーツ

SFっていうのは「Science Fiction」の略であり(Sci-Fiサイファイ)」とも書く)、ま、科学的に破綻のない範囲内で現実の世界から離れてトリックや冒険を楽しむもの、と考えればほぼ正解でしょう。

 

そんなSFの中によく登場するのが、人が着るタイプのロボットというか鎧というか。
動力が内蔵されていて、中の人の動きをトレースしながらパワーアシストもして、あと武器を装備していたりブースターでジャンプできたりというのが基本的なイメージです。
そういうメカをパワードスーツなんて呼ぶこともありますが、この名称とアイディアはハインラインの小説『宇宙の戦士(Starship Troopers)』に登場したものです。
超未来の宇宙の彼方で、パワーアシストされたロボットのような鎧を着て戦う兵士を書いた物語ですね。
中身はゴリゴリの軍国主義
この小説が映画化されたとき、残念ながらパワードスーツは登場していない
3で出ているらしい
このアイディアはSFの世界では好意的に受け止められて、広まっていきました。

 

 

 

パワードスーツが日本で広まったキッカケというと、日本のスタジオぬえが描いた『宇宙の戦士』の挿絵が素晴らしく良く描けていたからです。

 

『宇宙の戦士』のオリジナルの初版がこちら。

 

 

そしてハヤカワ文庫から出版された『宇宙の戦士』の挿絵(一部)がこちら。

デザイン:宮武一貴(みやたけ かづたか)、作画:加藤直之(かとう なおゆき)
玉子を拾っています。

 

どうですか、このクオリティ。
現実に作られそうなリアリティがありますね。
それにしても上と下では大違いです。
SFファンはみんなこのイラストを見て、こんなのを着て戦ってみたいと思ったものです。
中には小説は読みもせずこの絵欲しさで本を買ったのもいた
こうしてパワードスーツというアイディアは広まっていきました。

 

 

 

でも実際は。
金属でできた鎧を着たら、ほとんど動けませんよね。
西洋の鎧だって相当しんどそうだし、装甲は薄そうだし、足の付け根周りはスカスカだったりします。
SFだけに宇宙空間でも戦いたいわけで、きちんと全身が包まれていないといけませんが、それできちんと動ける構造というのはかなり難しいです。
それは中学生が考えたって分かることで、でもパワードスーツというアイディアは捨てがたい。
だからみんな無い頭で色々考えたわけですよ。
大真面目に設定を考える記事が雑誌に載ったりもしました。

 

アニメック誌22号に掲載された記事

中に人がいなければ、ただのロボットならばどうにでもなるのにね。
それでみんな細かいところは置いといて、「らしさ」を重視してデザインしていたわけです。

 

実は1960年代に、アメリカのGE社でパワードスーツの開発が行われていたのです。
その名は「Hardiman(ハーディマン)」といい、いい線まで行ったらしいのですが完成には至らず。

カニハサミの左側の箱の中で手を動かす

結局体を覆うのではなく、体の一部分に装着する形のもののほうが現実的みたいです。
ダウンタウンの浜ちゃんがCMをやっていたマッスルスーツってありますよね。
私が介護職員をやっていた頃に販売店の人がプロモーションで来たことがあって、私も装着したのですが重い物を楽に持ち上げることができました。
あれってモーターやバッテリーは搭載しておらず、スプリングの力だけでアシストしてくれるのです。
優秀だと思ったけど装着が面倒でね、忙しい介護施設で使うのは難しいと思いました。

 

メーカーのウェブサイト ↓

 

 

 

そんな中でかなり現実的と思えるアイディアが登場します。
士郎正宗のマンガ『アップルシード』に登場した、ランドメイトです。

 

これは前面のパネルを外して中の人が見えるように描かれたもの

 

初期に描かれた内部構造

 

これもかなり初期、動きがよく分かる


分かりやすい絵が見つからなくて三枚貼りましたけど、要は人間型で人間より大きなロボットのお腹に人間が貼り付くような仕組みですね。
人間の両腕を収納する部分は外に出ていて、人間が腕(マスターアーム)を動かすとロボットの腕が同じように動きます。
一番上の絵だとマスターアームから指が出る構造になっている = マスターアームも武器を持てる
足はロボットの太ももの中にあって、人間の足の前後方向の動きをロボットは倍にしてトレースします。

 

我々SFファンはロボットの中にそのまま人間が入ることを大前提に考えていたので、肩やら脛やらの動きに無理が生じていたわけです。
腕だけを外に出して装甲の薄い筒に入れて動かすことにすれば、あまり無理は生じません。
ロボットの太ももを太くして中にスペースを作れば、足も動かせます。
しかもマスターアームとロボットの腕とのシンクロした動きは絵的に面白いです
いやぁ、何という画期的なアイディアでしょう!!

 

 

 

「こんなの無理じゃん!?」
そう思ったあなた、こちらを御覧ください。

 

SKELETONICS 7th MOSQUITO official PV Vol.2

 

ケルトニクスというメーカーが、ランドメイトに近いものを既に作っていたのです。
これ、確かNTTのフレッツ光のCMにも出てましたよね。

 

ケルトニクスのウェブサイト ↓

 

仕組みとしてはセンサーやモーターは使わず、機械的に人間の動きを模倣する骨組みですね。
足は単純に、竹馬みたいなものだし。
装甲も一切ないし。
でもこれを装着したら、巨人の気分が味わえると思いませんか。

 

ここまで出来るのなら、この先はそんなに難しいことだとは思えません。
一番の問題はコストでしょうね。
人の動きを感知するセンサー、それをロボットに伝えてモーターで動かす仕組み、かなりの予算が必要でしょう。
米軍が作らないかな?

 

 

 

ちなみに『機動戦士ガンダム』のモビルスーツは、元々はハインラインのパワードスーツみたいなものをやりたかったのだそうです。
ただ当時のオモチャとしては「身長数十メートル」みたいなものじゃないと売れないと、スポンサー企業からの注文があってああなったわけです。
いや、パワードスーツなら中高生には売れたと思うけど……
名前にだけ名残があるってことです(移動式服?(笑))。
実際にアニメでパワードスーツをやろうとしたら、当時のアニメ界では無理だったでしょう。
椅子に座ってレバー類を動かすという形でないと、作画が大変そうです。

 

ただ『ガンダム』の場合は、後づけで理論的な肉付けが繰り返されていった作品でもあるのです。
特にモデラーは正式な設定以外にも、独自の設定をどんどん作っていきました。
その先駆けといえるのが、ムック本「ガンダム・センチュリー」です。
河森正治かわもり しょうじ)が同人誌でやっていた「ガンダムの理論的な裏付け」という、これは一種の遊びなのでしょうけど、これが「ガンダム・センチュリー」に繋がりました。

 


この本では『ガンダム』の世界に現実の科学技術を重ねることで、『ガンダム』のリアリティを向上させたのです。
SFファンって作品の中に登場するものを、現実の科学技術と比較してそのリアリティを検証したり、逆に夢みたいな技術に現実の理論を当てはめてリアリティを感じたりするのが好きなんですよ。
だから作品に登場する設定があまりに荒唐無稽でもダメだし、リアリティに縛られて夢がない設定もダメですね。
この辺の楽しみ方は外野には理解されないでしょうなぁ。

 

 

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。