以前私が書いた記事で、福神漬のことを書いたものがあります。
そこでは福神漬がどのように広まり、飲食店で提供されるようになったのかを書きました。
↑ これね
私の記事は、『と学会誌39』に掲載されている光デパートの「福神漬けとカレーライス」という記事の要約です。
非常に興味深く、きちんと資料を探して調べて書かれた記事で、読み応えがあります。
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ただこの中で、戦後に洋食店のライスから福神漬が消え去って、カレーライスにだけ残った理由は謎だとしていて、私の記事でもそう書きました。
(ラッキョウ漬けと紅しょうがも消えたし、ハヤシライスには何も添えられなくなっている)
その後もこの謎について気にしていた私ですけど、今日なんとなく調べていたら……
意外なところに回答が見つかったのです! ビックリ!
今日見つけた記事はこちらです。
東洋経済オンラインの中の、近代食文化研究会の記事の中にありました。
この二つの記事(前後編)に書いてあることの多くは、と学会誌39の記事とダブっています。
細かい違いはあるにしろ同じ説が書かれていて、両方を読むと理論的にしっかり強固なものになるように感じます。
そして近代食文化研究会の記事には、なぜカレーライスの福神漬だけが生き残ったのか、そこまでが書いてありました。
私の頭の中でこれらの情報を整理して、ここに書いてみます。
※近代食文化研究会の記事は年代があいまいな箇所があるので要注意です。
まず昔の日本人にとって「ご飯と漬物」というセットはマストでした。
昔はご飯の量を今の倍くらい食べるのが普通で、あと味噌汁と漬物だけというのが当たり前だったそうです。
おかずがあったとしてもちょっとだけで、ご飯の多くは当時の濃い味の漬物で食べていたのです。
大恐慌の頃に大阪の阪急百貨店の食堂で、貧乏な人たちがライスだけをオーダーして、卓上にあったソースとライスに添えられていた福神漬だけで食事していたことは前の記事で書きましたが、東京の須田町食堂でも同じことをしていたそうです。
(須田町食堂は聚楽グループね)
栄養バランスからしたらとんでもない食事ですけどね。
戦前の洋食店では大量のライスに対しておかずとなるトンカツやカレーの量は少なく、お客は添えられた福神漬で多くのライスを食べていたそうです。
昔の洋食店ではトンカツは切らずに提供されていて、それをお客が一々ナイフで切って食べていました。
ナイフとフォークだと、たくあん漬けより福神漬のほうが食べやすいですよね。
カレーライスはスプーンで食べるので、やはり福神漬が合います。
それで洋食店のライスに福神漬が添えられる時代が続きます。
(そもそもなぜ福神漬が? というのは前の記事に書きました)
そして戦後の食糧難が終わり、逆に食料が豊富に出回る世の中になって。
日本人の食生活は激変します。
食べるご飯の量は激減し、その代わりにおかずの量が増えていきました。
やっと栄養バランスがよくなってきたのです。
そうなると、ご飯を食べるための漬物の必要性がなくなってしまいます。
塩分の摂りすぎは高血圧につながるという説も広まり、漬物の消費量はどんどん減っていきました。
それから、洋食をお箸で食べる文化が広まっていきます。
トンカツは切ってから提供されて、それをお箸で取って食べるのが普通になりました。
ハンバーグなんかも定食だとお箸で食べますよね。
このことが福神漬の逆風になったのです。
フォークやスプーンなら食べやすい福神漬は、お箸だと食べづらいです。
洋食店にお箸が広まるのと同時に、福神漬はたくあん漬けなどに置き換わっていったのです。
ライスとは別に小皿で提供されるたくあん漬けなどの漬物は、上記のことから次第に姿を消していったのです。
(そば屋さんでは親子丼なんかに添えられてますよね)

福神漬のメーカーは福神漬の需要がどんどん減っていったので焦りました。
生き残りをかけた福神漬メーカーは、相変わらずお箸を使わないカレーライスに目をつけました。
ただ、従来の漬物は塩っ辛くてカレーライスには合いませんし、そもそも塩分は嫌われ者になってしまってます。
それで塩分量を減らした福神漬を作って、カレーライスに添えてくれと営業したらしいのです。
その結果、カレーライスの福神漬だけが生き残ったのです。
(私見ですけど、シンプルなルックスのカレーライスに赤い福神漬は映えますよね)
こうして二者の説を合体してみると、大体の流れが分かってきます。
まず漬物は役割をおかずに奪われ、塩分が多いことで避けられるようになりました。
そして年代はハッキリしませんが、福神漬メーカーの頑張りによって福神漬はカレーライスの脇で生き残ることができたということです。
ならたくあん漬けなどのメーカーは何をしていたのか、という疑問は残りますけど。
ただ、今でも家庭の食卓で普通にお箸を使っていることからしたら、たくあん漬けは飲食店で減っても家庭では生き残りやすい気はします。
読みづらい記事で申し訳ないです。
自分の中では、カレーライスにのみ福神漬が残った理由が見えてきて嬉しかったです。
ではなぜハヤシライスには福神漬が添えられないのか?
あははは、まだこの話は続きそうです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。