スプーキーじいさんって何考えてるの!?

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芝浜という噺

年末になると寄席でよく演じられる「芝浜」という噺(はなし)があります。
落語ファンにはお馴染みの人情噺で、この時期に演じる噺家が多いです。
そしてこの噺は、噺家によって中身がかなり違うことでも有名です。
今回は「芝浜」を知らない方のために、私が知るあらすじをここに書きます。
みなさんが知る「芝浜」と違う部分もあるでしょうけど、そこはどうかご容赦を。

 

 

 

その昔、今の東京の田町辺りに住む貧乏な夫婦がいました。
亭主は天秤棒一本で魚を担いで売り歩く魚屋であって、腕がいいのでお得意さんがつくくらいのものでしたが、残念なことに酒好きでした。
酒のために休むことも多く、そうなると商売もうまくはいきません。
女房はしっかり働くように促しますが、それを素直に聞く亭主ではなかったのです。

 

その日も一晩中飲み明かしての帰り道、亭主は芝浜で革の財布を拾います。
中を見るととんでもない大金が入っていました。
喜び勇んで帰った亭主は、女房に酒と肴を用意するよう言いますが、女房は、

「あんた、一晩中飲み歩いて疲れてるだろ、一度寝てからにしなよ」

と言い、亭主はその通りにします。

 

亭主がしっかり寝てから起きて、酒と肴はどうしたと女房に聞いてみると、女房は怪訝そうな顔で、

「そんなお金があれば苦労しないよ、どんな夢を見たのか知らないけど仕事をしておくれよ」

とおかしなことを言います。
革の財布の存在を疑わない亭主は、女房を疑いながら部屋の中を探し始めますが、そこで女房が泣き出します。

「あんた、夢で見た財布まで当てにするほど落ちぶれちまったんだね」

ここで亭主は目が覚めます。
亭主は女房に謝り、今後は仕事に精を出すこと、お酒は一滴も飲まないことを誓います。
女房は喜んで、一緒に頑張ろうと亭主を励まします。

 

それから三年。
元々腕の良い亭主が頑張ったのですから、お得意さんも戻ってきて商売は繁盛します。
二人は表通りに店を持ち、従業員を雇うほどになっていました。
それもこれも、二人が頑張ったおかげです。
晦日になって、ご馳走を並べて亭主を労う女房。
亭主は女房の頑張りがあってこその今だと労います。

 

すると女房は畳に両手をついて頭を下げ、許しを請うではありませんか。
自分は亭主を騙していたと言うのです。
亭主が動揺しながら話を聞くと、あの皮の財布は実在したというのです。
大金を拾ったのに勝手に使ってしまえば打首になる、怖くなった女房は亭主が寝ている隙に大家さんに相談して、拾った財布は役所に届けることにして、亭主には夢で見たということで押し通そうということになったのだそう。
そしてその後に財布の落とし主が出なかったので、女房が受け取ってしまっておいたと言うのです。

 

どんな事情があるにせよ、亭主をだましたのは悪いことだと頭を下げる女房。
一瞬「この野郎!」と思った亭主でしたが、全て悪いのは自分だったと気付き、女房を許します。
お前のおかげで俺は真っ当な人間になれたんだと、亭主は心を込めて頭を下げます。

 

一件落着。
女房は亭主が大好きなお酒を用意していました。
今夜だけは思う存分飲んでほしいと言う女房。
亭主も元々はお酒が大好きなので、心が躍ります。
女房の酌で盃に入ったお酒を口元に持ってきて、その香りに頬が緩む亭主。
盃を口につけようとしたそのとき、亭主は盃を置きます。
女房は、

「どうしたんだい、私の酌じゃ気に食わないのかい?」

と聞きます。
そこで亭主は女房の言ったことを否定して、

「よそう、これも夢になっちまう」

と言うのでした。

 

 

 

何といういい噺なのでしょうか!
落語が笑いばかりではないということが、この噺一つでよく分かります。
年末にこんな噺を聞かされたら、自分は今年どうだったろうか? と振り返らざるを得ません。
それにしてもこのおかみさん、出来た人です。
そして演技上手(笑)。

 

芝というのはメーカーの東芝(東京芝浦)の芝ですね。
「芝浜」はyoutubeにもありますし、寄席で聞くと格別です。
是非一度。

 

 


 

 

今日も夕焼けが綺麗でした。

 

 

 

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。