スプーキーじいさんって何考えてるの!?

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映画と私 11

これまで私が書いたことを読んでくださった方なら薄々感じていたと思いますが、私は押井守の作品が好きです。
今回は押井監督の手掛けた実写映画の一つを取り上げます。

この記事はネタバレです! ご注意を!

 

 

アヴァロン AVALON)』

2001年に公開された映画です。

 

※映画『マトリックス』のウォ姉妹(笑)が気に入って流用した映画『攻殻機動隊』のOPは、グリーンディスプレイに大量の数字が踊るものでしたが、この映画ではニキシー管をイメージした大量の文字で似たようなことをやっています。

ニキシー管の一例

昔はニキシー管は身近にありましたから、この映画のOPは世代によって受ける印象は変わると思います。

 

 

 

まずあらすじを。

 

近未来、ヨーロッパに似たどこかの国で。
長く続く不況のために世間に希望はなく陰鬱で、そんな中で若者が熱狂していたのが没入型のアクションゲームだった。
専用の施設に行き、脳と直接アクセスできるギアを使い、仮想空間内で戦闘を伴うミッションを行い、クリアするとポイントが与えられ、それを現金化できる「アヴァロン」だ。

「アヴァロン」で人並外れた活躍をしていた女性ソロプレイヤーのアッシュは、凄腕のビショップというプレイヤーを見つけるが、彼は謎に包まれていた。
アッシュは過去に最強と言われたパーティ「ウィザード」の一員だったが、理由あってパーティは解散していた。
そのウィザードのメンバーだったスタンナと再会したアッシュは、ウィザードのリーダーだったマーフィーが「未帰還者」になったと教えられる。

脳と直接アクセスするアヴァロンでは、プレイヤーが未帰還者(廃人)になってしまうことがあるのだ。
マーフィーが「ゴースト」という隠れキャラを追っていたことが分かり、アッシュは調べているうちにアヴァロンの管理者とされる「九姉妹」という名前にたどり着く。
スタンナはゴーストの出現条件をつきとめ、アッシュはゴーストと九姉妹の謎を解くためにスタンナやビショップたちとパーティを組み、最高難易度のクラスAで最強の敵と戦う。

激闘の末に勝利したアッシュは、ついにゴーストを見つけて倒すことに成功。
そしてアッシュは一人だけ、まったく別のステージ「Class Real」へと飛ばされていく……

 

 

 

押井監督は仕事がないときはゲームに没頭していて、RPGをプレイしていたときに「ゲーム内で稼いだゴールドを現実の世界で使えるようにならないか?」と考えたのがこの映画の始まりとなりました。
そして制作途中で凍結となってしまった『ガルム戦記』の代替作としてこの映画が作られることになったのです。
予算が限られる中で、ポーランドで軍の戦車や攻撃ヘリを撮影に使えることを知った押井監督は、ポーランドの風景を使えば異世界感も出せることからポーランドロケを決断。
ポーランドと日本のスタッフがタッグを組み、出演者はポーランド人のみ(エキストラに多数のポーランド陸軍兵が参加)でセリフもポーランド語(日本映画なのに字幕)、軍の本物のライフルや戦車やヘリコプターが使われています。
武器兵器マニアの押井監督はウハウハだったとか
音楽はいつもの川井憲次、演奏はワルシャワ国立フィルハーモニー管弦楽団で重厚なサウンドを楽しめます。

 

私はこの映画、大好きなんですよ。
まずゲームでお金を稼げる世界の面白さ、ポーランドで作ったことによる異世界感、これがいいのです。
英語以外の外国語の持つ響きも、この映画のいい味付けになっています。
そしてオンラインゲームの隠された秘密、開発者が仕掛けた手の込んだ罠。
実際にゲームをやっていて、誰も見つけていない裏技や隠れキャラを見つけたような興奮を感じます。
テレビゲームが高度化してくると、広くて複雑な世界の中に思わぬ発見があったりしますよね。
本筋から外れて、そういうものを探しに行く楽しさっていうのはあると思います。
予算が豊富ではない分、多少ショボい部分も感じられますけど、逆にこんなマニアックな映画をよく作ったなと関心してしまいます。

 

押井作品で繰り返し語られてきた、現実と虚構の話はこの映画でも出てきます。
我々が暮らすこの世界は本当に現実なのか。
没頭しているもの、例えばゲームの中の世界は本当に虚構なのか。
この映画の中のセピア色の世界と、終盤に出てくるClass Realはどちらが現実で、どちらが虚構なのか。

ワルシャワで撮影されたシーン

普通に撮影された街の映像が、まるで虚構のように感じられる演出が冴えています。
これは面白いですよ、もし自分が物語を作る人なら絶対真似したいですもん。
そしてこの映画も、ハッキリとした結論を出さずに終わります。

 

 

 

公開当時は一部から「撃たれた人間がガラスのように砕け散る」描写に対して批判がありました。
この映画の中の戦闘がゲームであることを分からせる演出ですね。

どうやらこういう演出を不気味に感じたり、「命を軽んじている」と捉える人もいたようなのです。
でも私には理解できませんでした、だって最初からゲームだって明示しているのですから。
私にはこれは、撃たれて消えるインベーダーと何も違わないと思えます。
それに戦争映画なんかで人が撃たれて死ぬシーンはいくらでもありますよね。
『アヴァロン』で血を(ほぼ)描かなかったことは必然だし、そうしたことで生々しさを消したことは正解だと思っています。

 

押井監督はこの当時「全ての映画はアニメである」と発言していて、こういうタイトルの本も出しています。

全ての映画はアニメになる(2004年)』(←Amazon

人が手で描いた絵であろうと、人間の演技を撮影した映像であろうと、それらを素材として加工しアレンジして作るのがこれからの映画になると、そういう主張です。
この『アヴァロン』でも、ポーランドで撮影した映像をCG加工して映画にしています。
決してそのままではないが、全部をCGで作るより安上がりという、CGの新しい使い方をしたわけです。
最後に登場する九姉妹の一人のこの表情も、CG加工されています。

まるで『2001年』のスターチャイルド

ある意味、実写映像でアニメを作ったわけです。
それがとてもいい方向へ働いたと私は思っています。

 

あとは押井監督のらしさが減ったのがこの映画の味ですよね。
この映画に日本は出てきません、立ち食いそばも千葉繁も出てきません。
千葉さんってもう71歳なんですね!
ついつい「いつものアレ」に成りがちな押井作品の中で、この映画にはまるで別の監督が作ったような新鮮さがあるのです。
それにしても言葉も通じないポーランドの人たちと、よく映画なんて作れたものです。
ポーランドのスタッフもかなり熱心に作品作りに加わったそうです

 

 

 

この映画のサイドストーリーが、押井監督によって書かれています。

Avalon 灰色の貴婦人(2003年)』(←Amazonタイトルが間違っている

この小説の舞台は映画『アヴァロン』の後になります。
場所はおそらく日本、この国でもアヴァロンは人気で、主人公たち腕利きのプレイヤーはアッシュのように謎を追っていきます。
映画と違ってアヴァロンについての詳細な説明があったり、銃器に関する解説があったりしますし、映画『アヴァロン』よりもマンガ的な内容となっていて、押井作品の中では読みやすいです。
これを読めば映画の理解も深まるので、セットで楽しむことをオススメします。

 

 


 

 

こないだ、初めての古いお店でご飯を食べてきました。
そば屋さんなのですが、ご飯を食べたくてサバ味噌定食にしました。

美味しかったです。
味噌味ってご飯が進みますね。
初めてでかなり古いお店なので不安もありましたが、期待以上でした。
こういう出会いは嬉しいですね。

 

 

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。