テレビアニメ『機動戦士ガンダム』には、ニュータイプと呼ばれる新しい人類が登場します。
離れた場所にいる人と意思の疎通をはかることができたり、見えていなくても周囲のことを察する勘の良さがあるのが特徴です。
人類は宇宙時代になっても戦争をしていて、主人公側や敵側に数人のニュータイプがいるのに戦争は激化していってしまいます。
ところが最終回で突然、三人の子供がニュータイプだったことが分かり、物語は終了します。
これはつまり、今の人類は戦争ばかりやっていて救いようがないけど、子供たちは新しい未来を作ってくれるだろうという意味が込められているわけです。
で、『ガンダム』が放送されたのは1979年から1980年にかけてです。
まだ東西冷戦の真っ只中で、アメリカかソ連のどちらかが暴走して核ミサイルを発射してしまえば、当然もう片方も応戦してしまうわけで、世界が滅亡する可能性が高かった時代です。

東西冷戦は1989年に終わりましたけど、それまでの時代に作られた色なジャンルの作品には、この「いつ世界が滅亡してもおかしくない」という恐怖感が多かれ少なかれ含まれていたのです。
『宇宙戦艦ヤマト』なんてモロそうだし、『北斗の拳』は核戦争後の世界が舞台です。
映画『博士の異常な愛情』もモロですね、映画『マッドマックス2』も核戦争後の世界の物語です。
おなじみ『ルパン三世』はまずマンガ版が雑誌に掲載されたところから始まります(1967年)。
日本では戦後に「学生運動(安保闘争)」というのがあって、早い話が日米安全保障条約(安保)の改定に反対する学生が暴れたわけですね。

みなさんも昔のニュースフィルムで、国会議事堂の前で大勢の学生と機動隊が衝突している映像を見たことがあると思います。
安保は学生運動の甲斐なく、1960年に十年延長されて、1970年には無期限の延長がされました。
それがいいのか悪いのか、それはまぁ置いておいて。
1960年の改定に向けた学生運動は非常に盛り上がったそうですけど、1970年の改定に向けた学生運動は徐々に下火になっていきます。
結局、あれだけ大暴れしたって無駄だった。
若者は自分たちが持っているエネルギーをぶつける場がなくなって、しらけた空気になったそうです。
(バンバンの『いちご白書をもう一度』はこの当時の変化を歌っている)
(ガロの『学生街の喫茶店』は学生運動後の平和な歌)
(遠藤賢司の『カレーライス』は学生運動が終わった後にそれを揶揄するような歌)
当時は「何か面白いことないか?」が若者の口癖だったとか。
そんな中で、当時のマンガ家が通るコースとまったく別の方向からプロのマンガ家になったモンキー・パンチのマンガは大人気となります。
地方出身で働きながらマンガを描いていたモンキー・パンチは、古書店で入手したアメリカの雑誌「MAD」に掲載されていたイラストをお手本としました。
手塚治虫を源流とする日本のマンガ家とは違っていて当然ですね。
「カッコイイ!」
「いかしてる!」
当時はまだマンガは子供のものだったのに、二十歳前後の若者は夢中になって『ルパン三世』を読んだそうです。
そういうルパンファンの一人が、東京ムービーの社長でした。
こういう経緯があって、最初のテレビアニメ『ルパン三世』は若者向けに作られたのです。
(当時人気があった映画『007シリーズ』のテイストも取り入れた)
(私は偶然、番組放送前に「11PM」で紹介されていた、ルパンのパイロットフィルムを見ている)
ところが、それはまだ早すぎました。
『ルパン三世』はまったく視聴率が取れず、路線を子供向けに変更せざるをえなくなるわけですが……
私が以前から書いている、文化は生モノだっていうのはこういうことです。
東西冷戦なんて歴史の教科書に出てくるもので、戦争の恐怖は今でもなくなってはいないけど、いつ核ミサイルが降ってくるか分からない時代に作られた『ガンダム』を当時見るのと今見るのとは違って当たり前です。
学生運動というとあさま山荘事件とよど号事件しか覚えていない私ですから、マンガ『ルパン三世』が若者にウケていた頃の空気は知らないわけです。
マンガが多様化してしまった今、モンキー・パンチの絵柄を見てもそれほどショックは受けないわけで。
夏目漱石や芥川龍之介の小説を今読んで面白いというのはあります。
でも我々は当時の時代の空気を知りません。
過ぎてしまった時代の空気は、もう二度と味わえないのです。
だから、今生まれてくる作品は今楽しむべきなのです。
マンガでも、アニメでも、映画でも、小説でも、音楽でも。
テレビドラマ『それぞれの孤独のグルメ』の11話「ヘルシー定食」では、マンガ家の江口寿史が本人役で登場していて、実際に彼の仕事場やよく行くお店がこの回の舞台になっています。
(ゲスト主人公は平祐奈、原作者の久住昌之や劇伴のザ・スクリーントーンズも出演している)
(さすがに江口先生の仕事場はキレイでオシャレ、ご本人もね)
登場したお店、きっちん大浪の食べログ。
(場所は吉祥寺、定食は¥1,400から)
で、『トリビュートブック 100%孤独のグルメ!』という本がありまして。
マンガ『孤独のグルメ』の魅力を大勢で語り合うような内容の本です。
この中で数人のマンガ家が短いマンガを描いているのですけど、なんと江口寿史がきっちん大浪のことをマンガにしてるのです。

いやー面白い。
ドラマでこのお店が登場しているのは、もしかして江口先生から提案されたとか?
江口先生、よほどこのお店が好きなんですね。
こういうのも、ドラマ見て、マンガ見てっていうタイミングが大事ですよね。
きっちん大浪だって、今なら食べに行けるわけだし。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。