趣味なんていうのは好きな人以外には本当にどうでもいいものですよね。
今回は私の趣味の話を書きます。
私はカレーが好きで、これまでに色々な記事を書いてきました。
作るほうはまだ初心者ですが、カレーの歴史については色々読んできています。
そんな中で一番参考になったと思ってきた本がこちら。

この本の存在を知ったキッカケは『美味しんぼ』です。
『美味しんぼ』の単行本は膨大な数があって、それを全部読んだわけじゃないですよ。
人気マンガの中からセレクトして一冊にしたものが、昔はコンビニでよく売られていてね。
たまたま私が目にしたのが、『美味しんぼ』の中からカレーがテーマとなったエピソードをまとめたものでした。

安いですねー。
これは今でも古書店に行くと見かけることがあります。
この本でメインとなるのは、9回に渡って描かれた「カレー勝負」です。
カレーの定義から始まって、インドまで取材に行って描かれた濃い内容となっています。
元の単行本が出版されたのが1990年なので、一部情報が古いのは致し方ないところですが。
この二冊を読んでおけばカレーの基礎知識を得られると、これまでは考えていました。
でも最近になって新しい資料を読んでみたら、私の考えは間違っていたことが分かってきました。
森枝氏の本には間違いが沢山あるというのです。
そう指摘している本がこちら(↓ Amazonです)。
『新しいカレーの歴史 上: 日本渡来以前の諸国のカレー』 2024年、近代食文化研究会 (著)
Kindle版です、まだ上巻のみで、どうやら紙の書籍では出ていないようです。
(タイトルからすると下巻には日本のカレーの歴史が載りそうですね!)
この本の第一章のタイトルがこうなっています。
「謎の幻視と『美味しんぼ』から始まった、間違いだらけのカレー史研究」
いきなり刺激的です。
そして第一章の最初が、
「1.ガラパゴス・デマが跋扈(ばっこ)する日本のカレー史研究」
となっています、強気ですねー。
近代食文化研究会は多くの資料を元にこの本を書いていて、ソースも明らかにしています。
そして森枝氏が書いたことが間違っているとハッキリと書いています。
きちんと調べればこんなことを書くはずがないという調子で、森枝氏が幻視したのではないかとまで書いているのです。
それから森枝氏が参考にした、小学館の『日本大百科』のカレーに関する項目も同じように間違っていると指摘しています。
いやそれじゃあ、私のように森枝氏の本を信じてきたカレーファンはどうすりゃいいのよ? って話ですよ。
書き方が過激なので最初は眉唾モノだと思っていましたけど、読み進むととにかく参考にした資料が多く、しっかりとした説得力があることが分かってきました。
これだけの資料を調べたのなら、やはり森枝氏のような間違いはするはずがないと思えます。
例えば森枝氏の本の中の間違いの一つがこちら。

ここに書かれている『明解簡易料理法』という本が出版されたのは、『新しいカレーの歴史』によると1774年ではなく1747年だそうです。
(森枝氏自身が別の本で1747年と記述している)
この画像の左側に書いてあることも、前後関係が逆になりますね。
森枝氏に取材して描かれた『美味しんぼ』にも、当然間違いがあります。

最初のコマに書かれていることは間違いで、C&Bはカレー粉に関しては後発だし、森枝氏が参考にした、親会社となったネスレの宣伝文句も明らかに間違いだそうです。
いやはや、こうなるとカレーファンに与える影響は大きいですよ。
私を含めて、森枝氏の本を信用しているカレーファンは大勢いますから。
※こないだ読んだマンガ『今日もカレーですか?』(2020年、作:藤川よつ葉、画:あづま笙子)でも森枝氏の本から引用したと思われる箇所がありました。
『今日もカレーですか?』 第一巻 18Pより 残念ながらこのコマに書いてあることも間違いとなります。
日本にはカレーライスについての資料なんて全然読まない大勢の一般人と、一部に資料を読むようなファン層がいて、更にごく一部に近代食文化研究会のような海外の資料を調べる人たちがいます。
このファン層のほとんどが間違った情報を信じていて、今でもその情報を人に話したりブログに書いたりしているという……うわぁ。
しかも長年信じ続けてきた情報って、中々疑ったりできないものですし。
(間違いを指摘なんてしたら噛みつかれてしまう)
いやでも、近代食文化研究会の書いていることが本当に本当なら、嘘情報を広めた森枝氏に対する怒りも正直感じてしまいます。
で、そんなことを一般人は全然知らないし、どうでもいいと思っているっていうのがまた面白い。
『新しいカレーの歴史』はまだ読みかけなので、一通り読んだら記事を書くかもしれません。
それから、森枝氏の本や『美味しんぼ』が100%間違っているわけではないと思いますので、お間違いのないように。
今まで色々な本を読んできて思うのは、料理の歴史というのは残された資料が少ないので研究が難しいことです。
何しろ、作って食べたら消え去ってしまう(うんちになる)ものですからねー。
だからこそ、私のような年寄りが面白がって調べたりするのですよ。
生産性のないいい暇つぶしです。
あと近代食文化研究会の本は他にもあって、明治期以降の日本の食文化について書かれた本が色々あります。
私が読み始めたのがこちら(↓ Amazonです)。
『牛丼の戦前史』 2024年、近代食文化研究会 (著)
牛丼の歴史に関してはマンガ『めしばな刑事タチバナ』(作:坂戸佐兵衛、画:旅井とり、週刊アサヒ芸能で2010年から連載中)にも描かれていました。
牛丼は昔は「かめちゃぼ」と呼ばれていたそうです。

この辺の話をもっと掘り下げられないかなーと思っていたら、いい本が発見できました。
『新しいカレーの歴史』と並行して読んでみます。
ちなみにこれらの本より軽く読める、食に関する記事がこちら。
以前福神漬のことを書いたときに参考にしたのもこちらです。
お暇なときにどうぞ。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
