私は中学生の頃に、プラモデルにハマってました。
考えてみたら今から半世紀も前のことで、自分で驚いてしまうのですが。
当時は第何次か忘れたけど、プラモデルのブームが来ていたのです。
(戦車・戦艦・戦闘機などのスケールキットの時代です)
私が一番作っていたのはウォーターラインシリーズという、1/700スケールで海面より下の船体を省いたプラモデルです。
完成させて机に置くと、まるで海の上に浮いているように見えるのです。

※「プラモデル」という名称は元々はマルサン商店の登録商標だ、というのはファンには常識みたいなことですけど、「プラスチックモデル」と「プラモ」もマルサン商店は同時に登録していたのですよ。
ただこの後者の二つは、マルサン商店が後に取り下げています。
現在「プラモデル」の権利を持っているのは日本プラモデル工業協同組合で、この組合に未加入のメーカーだけは「プラモデル」を使用することが出来ません。
そしてファンやメディアが使用することはまったく問題がありません。
今でも私はプラモデルやミニチュアが好きで、作ったり買ったりすることは無くなりましたがネットではよく見ています。
(あ、RGのガンダムMark IIは作ったなぁ)
中にはオーダーで精巧な模型を作るところもあって、完成品の写真には感動すら覚えます。
↑ 模型の完成品の専門店、ウッドマンクラブのHP
今はエッチングパーツなど、リアルに仕上げるための便利なものが色々あって楽しそうです。

プラスチックでは表現不可能な細かさを表現できる
偏光フィルムという商品もあります。
戦闘機のHUDのような、虹のような色の透明パーツを再現するフィルムまであるのです。

ただキットの価格が昔とは比べ物にならないくらい高額になっているので、こういうものまで買い揃えると出費は凄いことになってしまうでしょうねぇ。
50年前だとこういうものはなくて、あるものだけで頑張ってました。
例えば艦船模型の空中線に、釣り糸のテグスを使うのはポピュラーだと思います。
そういう技が広まる前には、ランナーを溶かして伸ばして使っていました。
よくプラモデルの説明書にも書いてありましたが、パーツが付いている枝のようなプラスチックの棒を熱して伸ばすのです。
私のやり方はこうです。
ランナーを3cmくらいに切って、端をペンチで持ちます。
ガス台のガスを弱火にして、炎の近くにランナーを持っていきます。
ランナーが熱で溶けてきたら火を消して、溶けたランナーの端を五徳に接触させて思いっ切り引っ張るのです。
こうすると糸より細い線が出来上がります。
あとはマストの間に貼って、つや消し黒で塗って、端のほうに白で碍子を描いてあげれば完成です。
テグスと違って切れやすいのが弱点でしたがね、こういう張り線をしてあげると全然違ってきます。

お見事過ぎてため息が出ます
昔のウォーターラインシリーズは、付属していた底面に貼る板が妙に分厚くて、これは薄いプラ板を同じ形に切って貼ってました。
こうすると背が少し低くなっていい感じになります。
あと海で航行している場面を作るときには、発泡スチロールの板を使ってました。
水彩絵の具で青緑に塗ってあげて、戦艦の舳先や後ろの波は同じ発泡スチロールを盛り上がった形に切って、木工用ボンドで貼ってあげて。
戦艦の主砲は今ならエッチングパーツに交換するのでしょうけど、昔はキットのままで、ピンバイスという小さいドリルで先端に穴を開けてました。
こんな小さい工夫でも、完成したときの見た目のイメージはかなり変わるのです。
昔は塗装は筆塗りが当たり前でした。
私は頑張って小遣いを貯めて、一番安いエアブラシを買って使ってました。
エアブラシを使うと、飛行機のプラモデルみたいに広い面積を均一に塗装することが簡単になります。
この頃に下地を塗るとか、マスキングするとか、そういうことを覚えました。

線で囲んだ部分に薄めた塗料を入れる
中央上部のボタンがトリガー
右端のつまみを回すことでスプレーの太さも変えられる
戦車や戦艦の場合は、筆塗りでも十分でした。
全体を塗り終わったらウェザリングをします、つまり汚しですね。
戦車の場合はサビを表現して、あと砂ぼこりを表現するために私はとの粉を擦り付けてました。
薄茶色なので北アフリカ戦線の戦車なんかだと効果的でしたね。
中学校の技術の時間に本棚とか椅子を作りますが、木工で使うとの粉が砂ぼこりっぽいと思ったところからのアイディアです。
あと車両のタイヤですけど。
ヤスリで接地面をしっかり削って、使い込んだタイヤにしてあげると全然違います。
キットのタイヤは新品の状態だから妙に浮くのです。
あとはつや消しのグレーで塗ってあげればOK(黒ではなく)。

タイヤは減ってて
当たり前
それにつけても
金の欲しさよ……
戦艦の場合は、側面が結構汚れています。
そういうのは箱絵が参考になりました。
箱絵を見ながら同じ場所を汚してやればいいのです。

箱絵はこれ以外にも参考になりました。
例えば高射砲の盾を外した状態を作るときに、盾を支える腕のようなパーツがあって、これが折りたたみ式になっていることを私が知ったのは箱絵に描いてあったからです。

盾を取り付けたときは線で囲んだ棒を倒して支える
あとランナーを太めに伸ばして金色に塗って2、3mmに切って散らして空薬莢に見立てたりしてね。

タミヤの1977年のカタログから
米兵が持っているBARという機関銃のバイポッド(二脚)が折りたたみ式になっていることを知ったのも箱絵です。

これは折りたたんだ状態です
キットは立てた状態なのです
箱絵はネットのない時代の貴重な情報源だったのです。
私は70年代からホビージャパン誌を買ってました。
(当時は田舎にいたから書店での取り寄せだった)
そこには色々な技術が書いてありましたが、工具類に関しては模型店では入手できないものが多かったです。
当時のプラモ屋さんには、塗料と筆とニッパーくらいしか置いてなかったのです。
それで、HJ誌によく「水ペーパー(耐水ペーパーのこと)」というものが登場していて、なんじゃそりゃ? と思って。
当然、当時の模型店には置いてませんでした。
それである日思いついて、ペンキとかの塗料を扱うお店に行って聞いてみたらあるわあるわ(笑)。
そのお店でゴッソリ買いましたよ。
あと私が通販を初めて使ったのも、プラモデルの工具を買うためでした。
やはりHJ誌で見た「カミソリノコ」っていう、歯が薄い小さいノコギリがあって、これは地方では入手困難だったのです。
カミソリノコをどういう場面で使うかというと。

例えばこの画像の線で囲んだ部分。
これはbf109のラジエーターで、画像だと後ろが下がってますよね。
前の口から入った空気が中を通って後ろから出るわけですが、キットだと後ろが閉じた状態になっているのです。
主翼のキットは上下を貼り合わせます、それで下面のこの部分をカミソリノコで切り離して、角度を下げて接着してあげるわけです。
普通のノコギリだと削れてしまう部分が多いから、切った後の直しが大変なのです。
(この中にあるラジエーターまでは作らなかったですが)
こういう工夫をプラモ仲間が発見してくれたときの嬉しさっちゃないですね!
リアリティを増すための工夫って自分で見て喜んで、仲間に驚かれてまた喜ぶという二段階の幸せです。
こんなことばかりしていたので、地元の模型店のコンクールでトロフィーも取りましたし。
今となっては懐かしい想い出です。
プラモデルの楽しさが少しでも伝われば嬉しいです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。