こないだ私は、カレーの歴史について書かれた本のことを書きました。
また同じ記事の中に、牛丼の歴史について書かれた本のことも書きました。
その記事はこちら ↓
それぞれの本はこちら ↓ ですが、どちらもAmazon Kindle用の電子書籍のみのようです。
ちなみに後者の表紙にある「東京ワンニラ史」というのは……
明治時代の浅草や銀座など、東京の繁華街にあった屋台で提供されていた庶民のための安価な料理のことを「ワンニラ(または「ワニラ」)」と言っていた。
それは、屋台で食事していると足元に犬がやってきておこぼれを頂戴していた、つまり「ワン公に下からニラまれながら食べていた料理」という意味。
そのワン公の中にはあの、帰らぬ主人を待ち続けた忠犬ハチ公もいた!
いやはや、もうこれだけで面白い!
それで中編では焼き鳥、後編では串カツを取り上げています。
私は今、この二冊を並行して読んでいて、どちらもやっと1/3まで来たところなのですが。
何しろ普通の小説やエッセイと違って中身が濃いので、中々速くは読めなくて。
書かれていることが興味深くて、引っかかるたびにネットで検索したりしているので、遅々として進まないのです。
(紙の書籍だったらもっと大変だったでしょう)
(Kindleは「引用して検索」がすぐできます)
『新しいカレーの歴史 上』は最初に、日本で広まってしまった間違ったカレー史についての説明から始まって、その後はカレーが日本に渡来するまでにイギリスではカレーやその他どういう料理が食べられてきたのか、それを詳しく書いています。
タイトルからすると、日本にカレーが渡来してからの話は下巻になるのでしょう。
私は正直、下巻に載るであろう箇所が一番読みたいのですけど。
ただ、日本に持ち込まれた料理がどういうものかを詳しく解明しないと、その後を論じることができないのだそうです。
・イギリスの植民地となったインドにおいて、どういうイギリス人がどういう生活をしていたのか
・その中でどんな食事をしていたのか
・それがイギリス本国にどう持ち込まれたのか
この上巻には著者が調べたことが事細かに書かれていて、多数の書籍からの引用もあって、物凄く濃いです。
(引用元についても細かく書かれている)
この手の本を読むのも結構大変で、こういう勉強も久しぶりのことです。
一方の『牛丼の戦前史』ですが、日本のことだからこちらのほうが分かりやすいと思ったらそうでもなくて。
最初のほうでは吉野家の歴史とかの話から入るので楽しいですけど、それが次には江戸時代の話になっていくのです。
例えば「丼(どんぶり)」って、みなさんはいつから存在したどんな食器だと認識されてます?
この本によると丼は、18世紀末から19世紀初頭に磁器の普及と共に広まったらしいのですけど、その形や大きさは一つではなく、唯一共通していたと思われるのは器の縁が持ち上がっていたことだけ。
つまり、特定の形と大きさの器の名称ではなかったのではないか、という話です。
そして我々が慣れ親しんだ形と大きさの丼は、なんと江戸時代までは存在していなくて、江戸時代の丼はお茶碗と同じか少し小さいものだったそうです。
それはなぜか。
これはどうやら、一膳飯(いちぜんめし)をタブー視していたことが関係しているらしいです。
我々はもう一膳飯なんて全然気にもしていませんが、ちょっと前までの日本では忌み嫌われることだったのです。
それはつまり、一膳飯は人が亡くなったときに極楽までの長い道中でお腹をすかせないように、お茶碗にこんもりご飯をよそって供えたもので。
生きている人間がご飯を一杯だけ食べてはいけない、形だけでも二杯以上食べなければいけないという事情が関係していたわけです。
形式的なマナーではなく、昔の日本人が本気で忌み嫌っていたのが一膳飯だったのですよ。
自宅でもお店でもご飯は必ずおかわりをするものだった、だから丼一杯で済ませてはいけないということですね。
※明治以降の主に都市部において、一膳飯をタブー視することがなくなっていって、天丼だの親子丼だのが普及していきましたが、小さい丼もすぐに消えたわけではなくて。
大きい丼で出された料理は「◯◯丼」、小さい丼で出された料理は「〇〇飯(めし)」という名称になったのではないか、そういう話がこの本に書かれています。
昔は余所のうちでご飯をご馳走になるときに、ご飯をおかわりするときにはお茶碗にご飯を少し残して差し出すのがマナーでした。
それは元々は、二杯目に入れられるご飯の量を少なめに調節するためのよくやる手だったということです。
また「居候(いそうろう) 三杯目には そっと出し」という川柳はなぜ「三杯目」なのか。
それはつまり、一回目のおかわりで二杯目のご飯を食べるのは当然で当たり前のことで、一回もおかわりしないのは縁起が悪いからという。
面白い……
こんな具合で、大変だけど面白い、速くは読めないし急いで読むのはもったいない、それがこの二冊なのです。
思わず人に話したくなるネタの宝庫ですね。
(だから読了していないのに今回書いてしまっているわけで(笑))
読書でこんなに盛り上がるのも、本当に久しぶりです。
しかも近代食文化研究会の本は他にもあるのです。
Amazonのリスト ↓
またこの年寄りの頭に、無駄な知識がどんどん蓄積されてしまいますな。
いやぁ、楽しみ楽しみ。
最近晩酌のおつまみは、スーパーの肉売り場で味付け済の焼くだけお肉をよく使ってます。

これは昨夜のホルモンですね。
噛み応えがあって美味しいけど安いので助かります。
こういうじいさんの晩酌も、未来になったら物好きが本に書いたりするのかな?(笑)
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。