今回はアニメ映画のことを書きます。
2021年に公開されたオリジナル劇場版アニメの『アイの歌声を聴かせて』です。

公式サイト ↓
SFテイストを入れた青春群像劇ですね。
近未来の日本のある地方の、IT系企業が作った実験都市が舞台となっています。
主人公の 天野悟美(あまの さとみ)は高校生で、悟美の母の天野美津子(あまの みつこ)は星間エレクトロニクスの課長でAI開発プロジェクトのリーダー。
二人は母子家庭で、悟美は密かに美津子のスケジュールデータにアクセスしたりしている。
悟美はある事情で、学内では浮いた存在になってしまっていた。
美津子は独断で、プロジェクトで試作中のAIを人型ロボットの芦森詩音(あしもり しおん)に搭載し、ルールを無視した実験を始める。
詩音を悟美が通う高校に転校生として通わせ、五日間バレなければ実験成功としたのだ。
詩音は悟美のクラスに入ってきて、いきなり悟美に近づき「悟美、今、幸せ?」と聞き、歌い始める。
その異常な言動に悟美は、詩音が美津子のプロジェクトで開発されたロボットであり、正体を気付かれてはいけないことも察する。
悟美の他にも幼馴染でハッカーの素崎十真(すざき とうま)、他数名が詩音の正体と事情を知ってしまい、成り行きで詩音の秘密を共有する仲間となっていく。
一方、星間エレクトロニクスで美津子と敵対する勢力は、プロジェクトを失敗させるために動き出していた……
まず、SFに慣れ親しんだ人にはまったく向いていないことを書いておきます。
映画を見るときに、設定をきちんと分析するような人にも向いていません。
かなりのご都合主義で作られた映画です。
元気で天然で歌うのが好きな美少女型のロボットが学校に波風を立てて、結果として生徒たちの絆が形成されていって。
途中で事件が起きて大人の事情でダメになりそうになるも、無茶をして問題を解決しようとして、結果ハッピーエンド。
友情とか恋愛とか泣ける要素とかもしっかり盛り込んで。
子供たちが見て喜びそうな映画にしようとしたのは分かります。
ただ、設定や脚本がチャチ。
考えてみてください、大勢の生徒や教師がいる学校に単体で乗り込んだ人型ロボットがロボットだとバレないって、どういうハイテクが使われているのか。
AIよりそっちのほうが凄いと思います。
詩音を見た人は誰もロボットだと思っていないのですよ?
そんなロボットがこの数年のうちに実現すると誰が思いますか。
これはアニメでないと無理な設定です。
そしてそのAIがあまりにも自然な動きをするのもなー。
これだけ話して動いて、人間でも中々しないような無駄な動き、ダンス、歌って。
しかも周囲のコンピューターに勝手に侵入して、自分の都合で動かしまくって。
こんな技術があることも凄いけど、それをゲリラ的にテストする大企業も凄い(← 悪口)。
「こんなのアニメだから許されるんだよ」と言われるように作っているとしか思えません。
序盤で人型の田植えロボットが出てきますが、今の田植え機のほうが余程効率的だし、田植え機にAIをプラスする形がベストだっていうのは素人でも分かります。
ドラム缶みたいなロボットが路線バスを運転していますけど、運転席は非常時には人間が運転できるように空けておくべきです。
そういう、理屈より情緒っていうのがこの映画の方針です。
だから、私のように理屈でダメだという人じゃなくて、この映画に乗って楽しめる人のための映画なのですよ。
高校生たちが企業の建物に侵入して破壊活動をしても、「ガンバレ!」って応援してしまうような人じゃないと見ていられません。
それと私は、部屋のカーテンを音声の指示で開閉できても全然嬉しくないです。
そういう無駄な自動化は1970年の大阪万博のときの感覚であって、それが必要なのは病院や介護施設の弱者だけ。
自分でカーテンの開け閉めもしないような人ってなんなの?
それなら透明・不透明を切り替えられるガラスのほうがよくない?
健常者が駅のエレベーターに殺到して、そのせいで弱者が利用できなくなって、その健常者が「運動不足だ」ってジムに行くようなナンセンスさには反対です。
この映画の作り手の感覚は、とても2021年のものとは思えません。
声優にプロの声優ではない俳優たちが参加していますが、特に違和感はなかったです。
土屋太鳳の歌も良かったです。
子供が友だちと映画館に行って、二時間楽しんで、その後で友だちと盛り上がるための映画としてはまぁこんなものでしょう。
いつの時代にもこういう映画は必要ですし。
見る人を選ぶ映画ですね。
一つのアイディアとして、アメリカのカートゥーンみたいなマンガチックな絵柄の映画にしたらよかったのかもしれません。
日本のアニメって、どうしてもこういうリアルな絵柄でハイテク風デザインを使いたがるでしょ。
そこから脱してしまえば、作品のアラも目立たなかったのかもしれないなって思います。
現代のおとぎ話にできたら、名作に成りえたのかもなって。
あと歌うAIロボットの名前は詩音であって、「アイ」ではありません(笑)。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。