スプーキーじいさんって何考えてるの!?

貧乏・暇なし・不健康。一人暮らしのじいさんのブログです。このブログに広告とか金儲けは入っていません。スターは一個だけ付ける主義です。

飲食店の想い出 1

私は若い頃に、蒲田に住んでいました。
住所としては東京都大田区西蒲田ですね、大学を出て最初に暮らした街です。
なぜ蒲田だったかというと、就職した会社が横浜だったこと(電車が逆方向になるのでガラガラ)と、友達が三人も住んでいたからです。
そんな蒲田には八年間住んでいました。

 

ときに1980年代後半から1990年代前半、世間はバブル景気でした。
当時の蒲田には色々な想い出があります。
飲食店で言えば、一番に出てくるのはタージマハールです。
東急線のガード下、今はくいだおれ横丁と呼ばれている(← なんでや!?)通りにあったカレー屋さんです。
私がまだカレーとかインド料理の知識がなかった頃に、初めてどっぷりハマったカレー屋さんでした。

 

 

 

タージマハールは小さいお店でした。
お世辞にもキレイとは言えず、物が多くて雑然としていました。
L字型のカウンターのみで、右奥にトイレ、カウンターの向こう側にはおやじさんとバイト(?)の女の子。
間違っても若い女の子を連れて行くようなお店じゃありません。
でも席はほぼ埋まっていて(と言ってもキャパは5、6人)、女性客もいました。
店内にはインドの調度品が多かった記憶があります、そしてスパイスの独特な香りが立ち込めていました。

なんとなくで入ってみた私は、正直後悔していました。
ネットなんて無い時代です、街情報だって今ほどはありませんでした。
美味しいお店を見つけるには、こうやって入ってみるしかなかった。
それがこんな散らかったお店だったのですから……
でも一度入ったからには、食べずに出るわけにもいきません。
着席して、一番ベーシックと思われるチキンカレーをオーダー。

 

小太りのおやじさんはおそらく60歳くらい。
こんな小さいお店に必要か? と思われるバイトの女の子は、まるでおやじさんの話し相手みたいでした(まさか孫?)。
おやじさんはよくインドに旅行に行くそうで、インドの話を女の子にしていました。
おやじさんは小さい鍋にカレーソースを入れて、そこへ肉やジャガイモを入れて煮ていました。
しばらくすると女の子が丸皿にライス(五穀米?(← 古代米だそうです))をよそって、料理が私の前に出されました。

スパイスのいい香りがします。
カレーソースはまるで味噌汁のようにサラッサラ。
変だと思いながらも、それをご飯にかけて食べてみて仰天してしまいました、美味しかったのです!
何じゃこりゃあっ!?
辛さはしっかりあります、激辛ファンには嬉しい辛さです。
そしてスパイスの複雑な香りと、不思議な旨味。
後に流行したスープカレーとはまた違うカレーです。
あんまり美味しかったので、食べ終わってからもう一品オーダーしたくなったくらいです。

 

以来、私のタージマハール通い(笑)が始まりました。
基本は週末、あと平日でも早く帰れたとき。
今だったらおやじさんとのトークを楽しんだところですが、まだ青かった私はそこまでのコミュ力はなくて。
おやじさんとたっぷりトークできたチャンスを逃したことを、今でも後悔しています。

 

 

 

1990年代の半ばに、私は遠く埼玉県へ引っ越しました。
蒲田に行くとしたら、ちょっとした旅です。
仕事だって忙しかったし、休日出勤も多かったし。
それでタージマハールには行かなくなってしまいました。
自分の中では「通えないくらいなら行かない!」っていう気持ちもありました。
分かりますよね、好き過ぎて距離を置く心理。
それくらい好きだったのです。

 

村上春樹著書amazon)の中で、「ギーの辛いカレーが食べたくなる」と書いています。
当時アメリカ在住だった村上春樹は、東京都渋谷区神宮前にあった「ギー」というカレー屋さんのファンだったのです。
東京にいた頃は安西水丸と二人で、よくギーにカレーを食べに行っていたそうです。
このギーの話もいずれまた。

 

 

 

それから十年くらい経って。
私は風の噂で、タージマハールが閉店したと聞きました。
なんですと!?
そのときのショックといったら!
あのカレーはもう永遠に食べられないのか……

 

その後ネットで調べてみたら、色々なことが分かってきました。

・おやじさんはカレー屋さんの前にラーメン屋さんをやっていた

・私が引っ越した後は、長男がお店を手伝っていた

・次男が新橋に同じ名前のカレー屋さんを出していた

・その後おやじさんは体調を崩しお店は休業、そして亡くなって閉店(2006年?

・数年後、新橋のお店は虎ノ門に移転して、長男と次男とそれぞれの奥さんの四人でカレー屋さんをやっている

こういう情報をネット上に残してくれている方がいるおかげで、随分助かってます。

 

私は新橋のお店には一回だけ行ったことがあります。

新橋から虎ノ門へと続く新虎通りができるよりずっと前です。
地下の小さいお店で、蒲田のお店に似たカレーを出してました。
付近のサラリーマンには大人気のお店だったそうです。
でもどこか違う、美味しいのだけど蒲田の味じゃない。
まぁ人間の味の記憶なんていい加減なものですが、私の中では違っていました。

 

虎ノ門のお店食べログ)は数年前に行きました。

ここも付近で働くサラリーマンに大人気だそうで、11時台の後半に行ったらギリギリで座れて。
二階にあるお店で、狭い中をお客と店員が右往左往していて、店員さんの大声が飛びかっていて。
居心地の悪いお店でした、食べたカレーも個人的には美味しくなかったです。
鶏肉が凄く硬かった
別におやじさんの味を大事に守らなくても、独自路線でこれだけ人気があるのですから、文句を言うのは違います。
ただ私の中だけの問題です。

 

 

 

蒲田のタージマハールの、あのサラサラのカレー。
あれは一体どういうレシピだったのか。
私もこれまでにアチコチでカレーを食べてきていますが、似たカレーには出会っていません。
サラサラ具合だけで言えば、上野のデリー食べログ)のカシミールカレー← デリーのHPより)みたいなのはありますけどね。
せめて一度だけでいいから、あのカレーをまた食べてみたいものです。

 

 

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。