このシリーズも「たまには」ではなくなってますが。
夜中に目が覚めて、何となく観始めてしまったアニメのことを書きます。
※ネタバレ有りなのでご注意ください。
『LUPIN THE ⅢRD 銭形と2人のルパン』(2025年)
これはAmazon Prime Videoなどのネット配信で観られるアニメで、30分枠を二本繋げたような形になっています。
その二本で完結しているとも言えるし、そうじゃないとも言える作品です。
私は予備知識0で観たので知らなかったのですが、この『LUPIN THE ⅢRD』はシリーズ化されていて今度映画もやるようで、その映画の直前のエピソードが今回の作品ということだそうです。
整理すると……
① 2012年4月『LUPIN the Third -峰不二子という女-』(テレビシリーズ)
② 2014年6月『LUPIN THE IIIRD 次元大介の墓標』(劇場版)
③ 2017年2月『LUPIN THE IIIRD 血煙の石川五ェ門』(劇場版)
④ 2019年5月『LUPIN THE IIIRD 峰不二子の嘘』(劇場版)
⑤ 2025年6月『LUPIN THE IIIRD 銭形と2人のルパン』(配信)
⑥ 2025年6月『LUPIN THE IIIRD THE MOVIE 不死身の血族』(劇場版)
こういう流れになります。
①(監督:山本沙代)は深夜枠に合うハードボイルドでアダルトな作風になっていて、それが②以降の『LUPIN THE IIIRD』シリーズ(監督:小池健)に受け継がれたわけです。
そんなことを知らずにいきなり⑤を観てしまった私。
観ていて「不親切だなぁ」なんて思ってしまいましたが、それも当然のことなのです。
ルパンのファンってこれを追い続けてきたのですね、不勉強でした。
これらを観ていなくて、いきなり映画館に行って⑥を観るのはちょっと無茶かもしれませんよ。
⑤の感想です。
まず、『LUPIN THE IIIRD』シリーズは1960年代から1970年代を舞台としています。
なので本作もソビエト連邦をイメージさせる国が舞台になっていて、出てくる物も古臭くしてあります。
作画は独特ですね。
原作っぽいとも言えるけど、もっと泥臭いです。
細かい動きに拘った上手い作画ですが(キャラが吐く白い息の形とかまで)、それはジブリや『エヴァンゲリヲン』的な上手さとはまったく異なります。
クセ強で劇画的で、わざと下手に描いているようにまで感じます。
この作画への拘りは凄いですが、これは今の若いアニメファンには強烈でしょうね。
(最初銭形警部だって分からなかった)
この作品はタイトル通り、銭形警部が主人公です。
「新ルパン」でやられ役に徹していた銭形が、ここではかなりハードボイルドなキャラに描かれています。
笑いは無し、強い意思と正義感を持ち、簡単にはへこたれないバイタリティもあります。
どんな人物の前でも引くことはなく、諦めることもない。
この銭形を見ると、『カリ城』の銭形でさえ甘く感じてしまうほどです。
物語としては、東西冷戦時代のソ連(を模した国)を舞台に、ニセルパンの犯行と計画を追う形になります。
このニセルパンがまた強烈で、子供に見せてはいけないレベルです。
自分が巻き込まれても平気で爆薬に点火したりして、異様な存在感があります。
一方の本物のルパンは次元と行動を共にしていて、軽口を叩くあたりは見慣れた感じ。
もちろん峰不二子もしっかり登場します。
(五右衛門はちょっとだけ)
鍵となるキャラは、ソ連の国家保安委員会のカラシコフ。
彼女は上官からの命令でルパン抹殺のために動きます。
自分の国のためならためらいなく人を殺そうとするカラシコフと、人殺しは犯罪だと非難する銭形。
この二人の対立は、面白がって爆破テロを繰り返すニセルパンや、国の反映のためには戦争が必要とする最高指導者のブリーレンの主義主張とも絡んでいきます。
自分の信じる正義のために、傷を追っても留まらず諦めない銭形。
そんな銭形にルパンは「正義なんてものは……」と嘯く。
銭形とルパンの友情に関しては、決して甘くならないようにしていながら、決して軽薄にもしていないところは好感が持てました。
そしてカラシコフも、銭形から感じるものがあって……

上に書いたとおり、シリーズの間の一作だけしか観ていない私にはあまり語る資格はありません。
でも、面白いと思いました。
決して追っかけっこではない、アメリカのスパイ映画のような重厚なこの物語は、噛めば噛むほど美味しいです。
子供だましな『ルパン三世』に嫌気が差して「ルパン」と付くだけで毛嫌いして避けるようになった私には、思わぬ贈り物でした。
あとね。
銭形って殴られたりケガしたりして満身創痍で、観ていて私は「早く病院へ行け!」と思ってしまいました。
そういう描写はしんどかったです。
なんかのんびり息をつくヒマもない感じも疲れました(笑)。
声に関しては、銭形役の山寺宏一は山寺宏一色がどうしても消えませんね。
もう毎日テレビから聞こえてくる声だけに、銭形じゃなくて山寺が話しているようでした。
その一方のルパン役の栗田貫一はやはり辛いです。
この二人は声優を交代したほうがいいと思います。
アニメ『ルパン三世』にしては珍しく、冒頭に登場した女の子のことを最後のほうで銭形が語るシーンが重かったです。
物語が片付くとつい、我々は途中で消えていったキャラのことは忘れがちですけど、そこを敢えて出してくるところは良かったです。
今月公開される⑥の公式サイトはこちら。
というわけでクセは思いっ切り強いけれど、しっかりした見応えのある作品でした。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。