今回は、やっとアマプラで観られるようになった映画のことを書きます。
『劇映画 孤独のグルメ』(2025年)

ご存知、テレビドラマ『孤独のグルメ』の劇場版です。
みなさんこのタイトルくらいはご存知だと思います。
原作は原作:久住昌之、作画:谷口ジローの同名マンガです。
この映画は簡単に書けば、ドラマ版の世界を広げた番外編ですね。
たぶんこの映画を観た人の大半は、ドラマ版を楽しんできたファンなのでしょう。
完全にそれを前提とした映画になっています。
そしてファンならばクスッと笑えるポイントがあちこちに散りばめられています。
逆に、ドラマ版を観ていない人には厳しいです。
※以下にネタバレがあるのでご注意を。
ストーリーは、主人公の井之頭五郎がある人から昔飲んだスープを探してほしいと依頼されて、それを探しに旅する話です。
それで普段のドラマ版にはない冒険などが入ってくるという。
映画なりに映像や音にも拘っていて、海外ロケもしています。
そういうクオリティはドラマ版より上ですね。
個人的には、この映画にあまりいい点は付けられないです。
その一番の理由は、脚本の酷さ。
ご都合主義過ぎます。
ドラマ版があっての映画というのはしょうがないにしても、無理矢理過ぎます。
まずは輸入雑貨商の五郎がスープを探しに行くというのが無理。
料理人ではない五郎が、話を聞いただけで昔のスープを再現なんてできるわけがありません。
(『美味しんぼ』かよ?)
それが郷土料理ならまだしも、家庭で主婦が作ったオリジナル料理ですから。
その食材だってよく分かっていないのだし、プロの料理人だって難しい仕事だと思います。
次に、この映画の五郎をはじめとした登場人物は、仕事はどうしているのか。
五郎なんて長期に渡ってスープ探しをしていて、途中で漂流して何日も島に閉じ込められたりしていて。
その間に取っておいたアポとかあるでしょうに。
(海水に浸かったはずのスーツもパリッとしてるし)
オダギリジョー演じるラーメン店の店主だって、東京で店を構えながら客はほとんど来ない状態で、どうやって家賃を払っているのか。
その前の内田有紀演じる元妻の話からしたら、蓄えもあるとは思えません。
それから五郎の食材探しだって、行き当たりばったり。
なんとなく流れで見つけた食材を、探しているスープの材料だと決めつける神経が理解できません。
そういうストーリーから感じるのは、五郎はスープ探しを適当にやってるなってこと。
やっつけ仕事であって、真面目に真剣にやっているとはとても思えません。
だからこの映画は締まりが無いのですよ。
そしてオダギリジョーの店に行ってみて、偶然そこにいた磯村勇斗演じる青年に五郎が声をかける流れ、有り得ないです。
オダギリは元々ラーメン屋だった、磯村はそのラーメンのファン、でもオダギリはもうラーメンは作らないと言っている、磯村に聞くとそのラーメンのスープは、
「優しい味のスープなんですけど、旨味が一つではなくいろいろ混ざり合ってるのが素人ながらにもはっきり分かるんです」
とのこと。
これだけで五郎は、本当にこれだけで、集めてきた食材でスープを作ってほしいとオダギリに依頼するのです。
え、なんで?
そして頑なにラーメンはもう作らないと言っていたオダギリが、五郎が持ってきた食材をちょっと見ただけで俄然やる気を出すというのももう、どっちらけです。
もし私なら、集めた食材が正しかったとしてですよ、五島列島にいる料理人に依頼しますけどね。
なぜ東京のラーメン屋に頼むのか……
こんな適当な流れなのに、最後にスープ捜索の依頼人はほぼOKを出しているし、内田演じる元妻もスープを一口飲んだだけで全てを理解するという。
これがこの映画のオチなんですよ。
え、ウソでしょ?
そういうご都合主義以外にも、この映画はテンポが悪すぎます。
ドラマ版のファンなら観ていられるけど、普通の映画としては落第です。
他の、高い評価を得ている面白い映画は、こんなにダラダラしていないですよ。
この映画、監督も脚本もプロがやる予定だったそうです。
依頼するつもりだった監督は予定が合わず、それなら松重豊がやろうとなった。
脚本もプロに依頼しかけたのを、松重が自分で書きたいと断りに行っています。
松重にとっては長年関わってきた作品だけに思い入れはあるでしょうが、その拘りがこの作品をダメにした可能性は大いにあります。
料理人ではない輸入雑貨商が昔のスープを探しに行くのと同じなのです。
映画版がドラマ版から離れて、かなり自由に動き回ったこと自体はいいと思います。
ドラマ版から離れなければ、いつものテレビスペシャルと同じになってしまいます。
折角映画にするのなら、思い切った飛躍をしないと意味がありません。
そして『孤独のグルメ』らしい、笑える場面は結構ありました。
特に韓国に不法入国してしまった五郎を迎えに来た入国審査官役のユ・ジェミョンが、美味しそうに食べる五郎を横で見ているシーンは爆笑ものでした!

遠藤憲一が遠藤憲一役で出ているのもよかったです。
ついでに、内田有紀はいつまでも可愛らしい人ですねぇ(笑)。
オダギリと内田という元夫婦が、ラーメン屋と食材の生産者の繋がりで復縁しそうな部分は後味がよかったです。
(五郎はオダギリに最後まで内田と知り合いだって言ってないですよね?)
この映画が興行収入十億円を突破したとのことで、本当にファンは有り難いものです。
あの五島列島と韓国とパリのお店だって、ファンが大勢食べに行ったことでしょう。
というわけで、辛口な感想を書きました。
本当に、こういう細かいことを考えずに映画を楽しめたらいいのですがね。
それが私の性格ですから。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。