スプーキーじいさんって何考えてるの!?

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ティファニーのテーブルマナー

ティファニー」と言えば宝石、が一般的なイメージでしょう。
あとは映画『ティファニーで朝食を』ですかね。
私は映画よりカポーティの小説のほうが好きです、って話は以前書きました。

 

残念ながら私の人生において、このような宝石を購入する場面はありませんでした。
知り合いの社長さんによると、「ティファニーなんて安物だよ」なのだそうですけど、いいじゃないですか。
庶民が愛する人に、こういう可愛らしいジュエリーをプレゼントするなんて素敵なことです。

 

ティファニーはジュエリーだけではなく、腕時計やテーブルウェアなども扱っています。
そんなティファニーアメリカのお店では、昔からお客様にプレゼントしていた本がありました。
それを書店で買えるように出版したのが、今回紹介する本です。

 

ティファニーのテーブルマナー』鹿島出版社
文:W.ホービング、絵:J.ユーラ、訳:後藤鎰尾(いつお

 

B6版とA5版の中間の大きさで、ハードカバーです。
amazonでも売られています(今じゃ値段は約二倍)。
今売られているこの本は、ティファニーブルーの装丁になってオシャレですね。
そして「FOR TEEN-AGERS」とあるように、この本は子供向けに作られています。

 

この記述から分かるのは、1961年にアメリカで発行されて、1969年に日本で発行されたということです。
つまり今から60年以上前の本だってことですね。
前にも少し書きましたけど、私が中学生の頃に母が買ってきてくれたのがこの本です。

 

 

 

まずはじめに教えられるのは、こんな意外なことです。

「若い男性は、右側の若い女性を助けて、楽にかけさせてあげるのがならわしです。
 二人が腰かけ終わったら、豆鉄砲を食った鳩のように、キョロキョロ見まわさないで、右側の女性の方に顔を向けて、話しはじめましょう。」

なんというくだけた内容でしょう!
そして楽しそうです、今すぐ誰かとレストランに行きたくなってしまいます。
一般的なテーブルマナーの本とは全然違いますよね。

 

この本はどのページも、このような素敵なドローイングと短い文章で成り立っています。
モデルさんがテーブルに向かっている写真なんてありません。
だから子供でも楽しく読めるのです。
この手のシンプルなドローイングは今の日本の絵師には難しいでしょう

 

 

「しかし、銀食器を大きさの順に並べる人もありますから、魚用ナイフと肉用ナイフ、魚用フォークと肉用フォークの区別を覚えなければなりません。もし、魚用ナイフとフォークが出されてないときは、小さい方のナイフとフォークを魚に使います。まちがったことに気づいても、そのまま食べつづけなさい。ナイフやフォークを元へもどしてはいけません。のん気になにげなくふるまうこと。」

珍しく長い説明文ですけど、覚えるべきポイントと、間違ったときの対処法まで書かれているので親切です。
きっと欧米のいい家では、親が子にこうして教えているのでしょう。

 

 

「フォークで肉を刺し、ナイフで切ります。一度に一切れだけ切って食べます。フォークの先に肉をしっかり付けるには、ナイフの刃をその肉片の下にいれ、フォークを軽くひねると、しっかり付きます。」

これもとてもいいワンポイントで、知っているかどうかでかなり変わってきます。
肉片をフォークにしっかり刺そうとしたとき、上からお皿に向かってグイグイ押すよりこうしたほうが上品ですよね。

 

 

「一口食べるごとに、お皿の上に少し前かがみになります。何かこぼしてもお皿の上におち、あなたの着物をよごさないですみます。」

分かりやすい……!
和食と違って洋食は基本、食器を持ち上げませんから、こういう食べ方をするのです。
ただしかがむのは「少し」だけ。
こういうのを見てから海外の人たちの食事風景を見ると、なるほどと思えます。

 

 

「もし、アスパラガスが長くてほそいときは、右手でフォークを使って、はしを切って、フォークに刺して食べます。そうすれば、上の絵のようなあざらしの曲芸を演じなくてすみます。そして短くなった茎は手でつまんで食べます。」

なんつーユーモア!
わざわざ背景にアザラシの絵なんて、笑っちゃいますね。
これは「べからず集」から。
最後の一切れは手でつまんでいいというのは、あまり知られていないのかもしれません。

 

 

いやいや、ケーキは分かりますが、上のようなきちんとしたデザートなんて滅多に食べませんから。
でもそういう場面に遭遇したときに、この絵を思い出せば対処できるのです。
スプーンにデザートを乗せようとして、お皿の上で追いかけっこをすることもありません。

 

 

そして最後に仕事を終えたシェフがいて、

「さあ おいしく召し上がれ!(BON APPETIT! (仏))」

シャレてますよねー。
このように、最初から最後までが実に楽しそうに書かれていて、

テーブルマナー = 怖い

というイメージを変えてくれます。
この本をプレゼントしてくれた母には感謝していて、未だに手放せません。

 

 

 

ちなみに私が若い頃、バブル景気で世間が盛り上がっていたわけですけど。
この本を「はい、ティファニーだよ」って女性にプレゼントするけしからん男が結構いたのです。
その冗談、笑えません。
どうせなら本物のジュエリーをプレゼントしなさいよ!

 

約百ページでテーブルマナーの基本が学べて、しっかり心に残るいい本だと思います。
日本人は几帳面だから、きちんとしようとすると細かいところまでがんじがらめになりがちですけど、周囲を不快にしないで楽しく食事しようという精神があればそれでいいと思います。
オススメです。

 

 

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。