たまには自分が読んできたマンガのことも書こうと思います。
榛野なな恵というマンガ家の『Papa told me』という作品があります。
連載開始が1987年ですから、バブル景気真っ盛りの頃ですね。
私は知人から教えていただいて、単行本で読んでました。
ヤングユーという雑誌での連載でしたが、ヤングユーが休刊してしまい、それ以後は不定期に発表されているようです。
私はヤングユーから出ていた単行本は全部読みました。
(ということは、来年は40周年じゃないですか!)
※今はCocohanaという雑誌で不定期連載されています。さすがに絵柄は変わってしまってますね。
私はこのマンガが好きです。
この作品は少女マンガのテイストですけど、子供向きの作品ではありません。
子供の目を通してみた大人の世界、そんな感じです。
あらすじを。
主人公の的場知世(まとばちせ)は小学生(おそらく十歳くらい)、父親の的場信吉(まとばしんきち)と二人暮らし。信吉は作家なので家にいることが多い(何を書いているのか具体的な描写はない)。
知世はルックスは整っているけど言いたいことはズバッと言えて正義感が強く、余計な言動をしてしまうこともしばしば。そして大好きな父と一緒に暮らし続けるためには周囲を心配させる子供ではいられないと思っていて、結果少し大人びている。
信吉はルックスが良く、周囲に適度に気配りができる頭とセンスの良さを持っているため非常にモテるが、彼がなびくことはない。それは亡くなった奥様が関係している。
この少し普通ではない父子には色々なことが起き、様々な人たちが関係していくが、二人は自分らしさを失うことなく楽しく暮らしている。
大河ドラマ的なキッチリとしたストーリーがあるわけではない、日常を描くタイプの連作短編マンガです。
絵柄もふんわりしていて楽しいのです。

休みの日にお茶でも飲みながらのんびり読むのに向いているマンガです。
物語の盛り上がりやバトルを求めるような男性には向かないかも。
女性マンガ家が女性向けに描いているので当然のことですけどね。
このマンガのキモは、みんなとはちょっと違う視点で物事を見てみようということです。
例えばこの父に親戚が見合い話を持ってきたりします、その方がいいからって。
それは単純に「子供には母親が必要」「父親が仕事に専念できない」そんなことを考えてのことでしょう。
でも、この二人が工夫しながら楽しく暮らしているのなら、そして父親が結婚相手を求めていないのなら、そういう紹介はただのお節介でしかありません。
それはまったく困っていない人に「大丈夫? 助けようか?」と繰り返し声をかけるようなもので、うるさいだけのことです。
人はそれぞれ考えていることが違う。
求める幸せの形も違う。
そういう当たり前のことが分からない人も世の中には大勢いる。
こんなことをときにはコミカルに、ときにはしんみると描いているのですよ。
そういう内容の作品だけに、意地悪な見方をすると「自分は他人とは違う、個性的な生き方をしている人間なのだ」という自己顕示欲のようなものも感じられてしまいます。
保守的な人たちを十把一絡げに悪者にしてしまい、自分たちの正当性をひけらかすみたいなね。
「うちは他所様とは違うざーますよ」みたいな臭いも、正直しています。
真面目な話、人は他者とよくコミュニケーションを取り、相互に理解し合い、お互いのことを尊重して干渉しないことが重要だと思うのです。
理想はね。
このマンガでは主人公側の人たちが、保守的な人に振り回された後に会って話し合う場面がよく出てきます。
こんな人がいたよ。
こんなことをされたよ。
そしてそれらを評価したりして。
その人が100%悪人ならそれもいいでしょうけど、決してそうとは言い切れませんから。
私はそういうのを読んだときに、それならなぜその人に直接それを言わなかったのか? と思ってしまいます。
お節介を断りきれずに付き合うのって、断らなかった側にも責任があるのです。
それを相手がいない場所で欠席裁判やるのって、見ていて気持ちのいいことではありません。
ま、知世はそういうのをズバズバ言ってしまうキャラなのですがね。

あとは正直、長く続けすぎだと思います。
作者が最初から想定していたと思われる流れのうちはとてもいいのに、人気があるからと長く続けすぎて、ネタがなくなって時事問題とかから持ってきたりして。
そういうゲストキャラが出てきて二人と絡むようなエピソードが増えていくのも正直ちょっと嫌なのです。
「この二人なら、こういう人がいたらこうするだろう」で一話作られてもな。
これは連作短編で、読み進むとこの二人について徐々に分かっていくタイプのマンガで、それが出尽くした辺りで終わっても良かったと私は思います。
ゲストキャラで物語の幅を広げるのもいいのですけど、それが増えすぎてもダメなのです。
私の場合、ヤングユーの単行本の前半は好きで繰り返し読みますけど、後半はちょっとなーって感じです。
ま、作者がやめたくても出版社がやめさせてくれないこともあるかもしれませんけどね。
あと読者はみんな思っていることだと思いますが。
この知世って子が時々、間違っても小学生には見えないことがねー(笑)。
そこがこのマンガの良さでもあるので、単純に欠点とは言えませんけど。
ちょっと大人過ぎる描写がちょいちょい入るのです。

小学生でこのお願いはちょっと無い。
『Papa told me』(作:榛野なな恵、集英社) 第三巻 Episode・13より
書き方が悪いけど、このマンガは大人の読者が読んで楽しんだりリラックスできることが良さですから。
ある程度のご都合主義は必要悪というかね、気にしないようにしないと。
私が気に入っているのは、やはり知世の亡き母のエピソードですね。
これは作者も一番力を入れていると思います。
素敵なんですよね。

この若い二人の儚い幸せがあって、今の父子家庭があるわけで。
なんか泣けてきてしまいます。
それと、知世はよくファンタジーの世界へ迷い込みます。
その描き方もいいのです。

父親と不思議な書店に入った知世はファンタジーの世界に迷い込み、自分の身分に疲れてしまった御曹司がこちら側の世界に逃げてきてこの書店をやっていることを知ります。
そして帰り際にこの一言、いいですね。
色々書きましたけど、ハマる人にはガッツリハマる、そうでない人には全然という、読む人を選ぶタイプのマンガですね。
小粋な笑いも沢山入っていて、読むとスッキリするようないいマンガだと思います。
気になるようなら是非。
あと最後に、大人になった知世も見てみたいです!
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。