今回は私の原点とも言えるマンガのことを書きます。
それは、藤子不二雄の『オバケのQ太郎』です。
日本人でこのオバQを知らない人はいないんじゃないかと、それくらいメジャーなキャラクターですね。
若い世代は知らないかもしれませんけど、クリィミーマミみたいなリバイバルヒットも有り得ます。
マンガ『オバケのQ太郎』の連載開始は1964年、掲載誌は週刊少年サンデーです。
この頃の藤子不二雄はスタジオゼロに所属していて、スタジオゼロ(※)のメンバーがアシストしています。
※スタジオゼロは鈴木伸一、石森章太郎、つのだじろう、藤子不二雄(藤本弘・安孫子素雄)、赤塚不二夫らが参加した有限会社で、皆の憧れであったアニメを制作することを目標とし、収入はそれぞれ(雑誌部という部署名)が描いたマンガから得る仕組みだった。1971年に事実上の解散、2014年に精算されている。
ほとんどのネームとキャラ作画は藤本が担当し、安孫子は一部のキャラの作画を担当、ゼロのメンバーでは石ノ森が一番多く描いています。
背景を主に担当したのは『釣りバカ日誌』の北見けんいち(まだアシスタントだった)です。
つまり『オバQ』は、本当の意味での合作マンガなのです。
最初は短期で終わるつもりだったゼロのメンバーですがこれが大反響を呼び、連載の再開が決まり、アニメ化もされたことで人気はうなぎのぼり。
最初、アニメを放送したTBSやその他の会社はキャラクタービジネスにまったく乗り気ではなく、小学館が一手に引き受けました。
そしたらアニメもマンガも大ヒットしてタイアップ希望が殺到、小学館はそのための子会社を作り、この儲けで建った小学館のビルのことは「オバQビル」と呼ばれました。
(2013年に閉鎖されたとき、小学館ゆかりのマンガ家が集結して大量の落書きを描いたあのビルです)
私はまだ小さかったから詳しいことは覚えていませんけど、1969年から刊行された虫コミック版(※)の単行本は全部持っていました。
たぶん私が初めて買ったマンガの単行本もこれだと思います。
この全12巻を繰り返し繰り返し読んだものです。
※虫プロ商事から刊行された、トキワ荘メンバーを中心としたマンガ家の作品の単行本シリーズのこと。当時の単行本は今のように掲載された雑誌の出版社から出ていたわけではない。だがわずか5年後に虫プロ商事が倒産したのでこのシリーズは無くなってしまった。カバーの裏側にもマンガやイラストが印刷されていたのが特徴。現在は古書市場で大変な価格を付けている。
『オバQ』の単行本は1980年代までは常時書店にある状態でしたが、その後見なくなってしまいます。
1981年の藤子不二雄自選集に少数がセレクトされ、1985年の藤子不二雄ランドの全20巻を最後に全話を読むことが出来ない状況が長く続きます。
この『オバQ』の単行本が出なくなった理由は色々と噂されましたが、本当のところは分かりません。
2009年になってやっと『オバQ』は藤子・F・不二雄大全集で読めるようになり、2015年にはついに虫コミック版が復刻されたのです(紙の書籍と電子版の両方)。
虫コミックを繰り返し読んだ者からしたら、これは本当に嬉しかったです。
私が実際に手にした単行本の中では藤子不二雄ランドの全20巻(1985年)が、学年誌などの掲載分を含む一番ボリュームがあった単行本だと思います。
能書きが長くなりました。
小学生の大原正太が忍者ごっこの途中で雑木林の中で見つけた大きな玉子を割ったところ、飛び出してきたのがQ太郎です。
行くあてのないQ太郎は正太の家に居候することになります。
おそらく『オバQ』は「異生物同居型マンガ」の元祖になるのではないでしょうか。
Q太郎は空を飛んだり透明になったりする能力はありますが、他のオバケのように変身する能力だけはありません。
そしてとんでもない大食いで犬が嫌いで、頭は悪いが正義感は強いという愛すべきキャラなのです。
私は『オバQ』を読んでいて楽しかったのはもちろんですけど、自分もQ太郎になりたいと思ったものです。

『オバケのQ太郎』(作:藤子不二雄、小学館)第一巻より

『オバケのQ太郎』(作:藤子不二雄、小学館)第一巻より
こういう当時でないと分からないネタが多数含まれています。

『オバケのQ太郎』(作:藤子不二雄、小学館)第一巻より
同じ雑誌部ということで、連載開始当初は石ノ森がかなり活躍していました。

『オバケのQ太郎』(作:藤子不二雄、小学館)第一巻より
『オバQ』にはこういうナンセンスな笑いが沢山入っています。
F先生の笑いの才能はもうこの頃から全開でしたね。
いやもう、書き始めたらキリがないのでこの辺で。
一つトリビアを書いておきます。
シャ乱Qの曲でも有名な「ラーメン大好き小池さん」ですけど。
第一巻・第九話の「おしかけ入学」で初登場しています。
正太の小学校へQ太郎がやってきてしまい、騒動を起こすという回ですね。
マラソンを嫌がる正太のために、透明になったQ太郎が正太を担いで走るというシーンです。


犬が嫌いなQ太郎が先を行く先生とは別のコースへ進み、ラーメンの香りにつられて「小池」という表札の家へ上がり込んでしまいます。
先生に聞かれて「わかりません。」と答えているのが小池さん(彼が答えているのがまたおかしい)。
(その後のコマで真顔で「いや。」と言っているQ太郎がまたおかしい)
(ちなみに日本のマンガではかなは明朝体、漢字はゴシック体が標準)
実はこの小池さんは小池さんではなくてですね、鈴木伸一がモデルなので「鈴木さん」が正解なんですよ!
一応鈴木伸一はラーメン好きということになっていますが、本当は麺類全般が好物だそうで。
「ラーメン大好き」という設定は、藤子不二雄のお二人から取られています。
トキワ荘メンバーがよく食事していたラーメン店の「松葉」↓(食べログ)
鈴木伸一(※)は当時鎌倉の小池さんという家に下宿していて、背景を描いていた野口竜は「ラーメンが好きな鈴木さんが家でラーメンを食べているところへオバQがお邪魔する」というストーリーのとおりに、「小池」という表札の家で鈴木さんがラーメンを食べている絵にしてしまったわけ。
でも読者は誰もそんな事情を知らないわけで、表札のとおりにこの男性を小池さんだと思い込んだのです。
※鈴木伸一は現在92歳。マンガ家であり、アニメーターとして活躍して「日本一上手いアニメーター」などと言われたりした。解散状態のスタジオゼロを自身の個人事務所として存続させたのもこの人。
鈴木伸一が描いたフジサワ・ピコレットのCM ↓(youtube)
というわけで、長くなったのでこの辺で。
好きな作品については語ることが多すぎて困ります。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。