スプーキーじいさんって何考えてるの!?

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ワカメちゃんが持っていた物は一体?

朝日新聞出版が発行しているAERAの増刊号で『サザエさん』が出ています。
これは季刊みたいですね、オヤジ週刊誌と同じ判型になっています。

前に購入したのが出てきまして、ちょっと読んでいたのですが。
うちのだと、中にはマンガ『サザエさん』と『エプロンおばさん』の抜粋とちょっとした記事が掲載されています。
その中にこんなマンガがありました。

 

部屋で刺繍をしているサザエさんの横で、ワカメちゃんがお菓子をねだっています。
でもサザエさんは全然相手にしてくれません。

 

拗ねちゃったワカメちゃんは紙を張り合わせて、何かを作っています。
そして最後のコマでは、表紙に「かよい」と書かれた帳面のようなものを手にぶら下げてお菓子屋さんへと向かっていくワカメちゃんを、サザエさんが捕まえて止めようとしているシーンで終わっています。
これで終わりなんですよ。
今の読者で、このオチを理解できる人がどれだけいるのでしょうか?

 

 

 

ワカメちゃんが手にぶら下げている帳面は、通い帳と言います。
江戸時代から昭和にかけて使われていたものです。
江戸時代に信用取引が広まって、ツケ払い(掛け売り)で買物するのが当たり前になります。
行商人や屋台での買物は現金払いでしたが、お店での買物はキャッシュレスだったのです。
もちろん、お店がお客の名前や住所や身分を知っていて、信用関係があることが前提ですけど。

 

ツケ払いがOKになったお客に対して、お店は通い帳を発行しました。
お客がお店で買物をしたときに、お客が持参した通い帳とお店の帳簿に何をいくら買ったのかを書き込みます。
商売が忙しいことを「書き入れ時」と言うのはこの帳簿に書き入れる件数が多い時期という意味
支払いはお盆と年末の二回。
お店はお客が買物で使った総額を記載した仕切書をお客に渡して請求して(請求人を「掛け取り」と言った)、お客がお金を払って終わりという仕組みでした。

 

つまり上に載せたマンガは、ワカメちゃんが勝手に通い帳を作ってお菓子屋さんに持っていき、お菓子をツケで買おうとしたというのがオチになります。
もちろん小さな子供がツケで買物なんてできるはずもなく、サザエさんが懸命に止めているわけです。
このマンガをもし今の若い世代に読ませたら、このような説明が必要となるのです。

 

※ちなみにアニメの『サザエさん』ではワカメちゃんは優等生ですけど、マンガのほうではこのようなちょっと抜けてる子供として描かれています。他の四コマだと算数が苦手という描写もあります。

 

 

 

落語なんかにもこの制度の話は出てきていて、大晦日に掛け取りに払わなければいけないお金をどうしよう? なんてことになったりします。
なにしろ半年分の支払いですから金額も大きくて、掛け取りも必死になって回収しようとします。
年末の場合は年が明けてしまうとお金を回収してはいけないというルールがあって、掛け取りがお金を回収できなかった場合は半年後に送られてしまうのです。

 

それにしたって日々の買物の代金半年分をツケにするなんてね。
魚だ野菜だ米だ酒だっていうのを半年分ですから、相当な金額になったはずです。
お金にだらしのない人なんて大勢いたことでしょう。
お盆と年末にどれだけの大騒ぎになったのか、考えるだけで恐ろしいことですね。

 

驚いたことに、この通い帳(← amazon)はまだ売られているのです。
律儀にヒモまでちゃんと付いていて、これをどんな方々が使われているのでしょうか?

 

 

 

さて、江戸時代は17世紀の始めから19世紀の半ばくらいまでですが。
17世紀の後半に江戸の日本橋にできた三井越後屋(後の三越)は新しい商売を始めます。
それが「現金掛け値なし」。
上に書いた掛け売りの場合、手間賃や金利が乗る(掛け値)ので価格は高く設定されます。
それをやめてしまい、店頭で商品と現金を交換する方式にしたのが現金掛け値なしなのです。
その場で払ってくれるのなら掛け値はいらないから安くできたわけ。
後で取りっぱぐれるリスクもなし。

 

お店は確実に資金を確保できてすぐ回せたので、メリットは大きかったです。
従来の商売と違って、大きな資金を用意しなくても始められるメリットもありました。
これが大ヒットします。
今の感覚で言ったら当たり前のことですけどね。
ちなみに「正札」というのは、このときに三井越後屋が使い始めたものです。
掛け値のない定価を示した札が正札というわけ。
また「現金掛け値なし」という言葉には「嘘偽りがないこと、正真正銘」という意味もあります。

 

 

 

日本史の授業でこの辺りのこともやっていたはずですけど、学校の授業っていうのは退屈だったからあまり覚えてない方も多いと思います。
私もです。
『サザエさん』のおかげで勉強になりました。

 

 

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。