ネットニュースで、今年3月に開業した高輪ゲートウェイシティが今あまり盛り上がっていないという記事を読みました。
「そりゃそうだろう」というのが私の正直な感想です。
あんなツルツルのペカペカの街にわざわざ行きますか? っていう話ですね。
あそこで働いている人だって、「こんな場所で働くのは嫌だな」って思っているのではないですか?
私はあちこちの街で働いてきました。
そんな中でツルツル・ペカペカのいい例が、有明です。
東京ビッグサイトのそば、有明コロシアムより先にある埋立地のビル群ですね。
ここは幕張のビル群によく似ています。
たしかに綺麗だし、西新宿的な未来感もあります。
(その割にエレベーターやトイレの数が足りなかったりする)
このオフィス街で平日の昼になるとどうなるか。
勤め人は数少ない安いチェーン店や、ワゴン販売のお弁当に殺到するのですよ、あとコンビニ。
有明の大きなビルの二階にすき家があって、お昼には大行列が出来ています。
私が通った安いそば屋さんも店頭には行列が出来ていて、料理を受け取って会計するまでに20分くらい待たされたものです。
それに対して、小洒落た飲食店はランチタイムなのに空席が目立ちます。
そういうお店でも安いランチメニューがあればいい方。
勤め人のほとんどは郊外に住む庶民ですから、ランチで二千円とか三千円とかなら入れないですよ。
飲食だけでもこんな感じです。
こうなると、有明で働いている人の多くは思うでしょうね。
「あ~あ、新橋なら良かったのになー」
この「新橋」が上野でも池袋でもいいです。
歴史があって古くからやっている飲食店が多数ある街のほうがいいに決まってます。
そういう古いお店の多くは安いし、それに面白いですから。
街歩きの楽しみって、その街の歴史とか古くからあるお店だと思います。
新橋なら駅前のニュー新橋ビルとか、新橋駅前ビル1号館とかね。
戦後の闇市のお店を吸収する形で出来たビルですから、多種多様のお店がひしめいています。
そしてそれぞれのお店に歴史があって、「このビルが出来る前はあの辺に(と指をさして)店があったんだよ」なんて話してくれたりして。
これらのビルは建て替えの話が何度も出ていて、でも権利関係が複雑過ぎて話がまとまらないそうで。
この辺の雑多な感じはどうにか残していただきたいものです。
この辺のお店はそれぞれの店員さんも個性的。
テレビで巨人戦が始まるとそればかり見ているラーメン店の店主とか。
立ち食いそば店なのにカレーだけ本格的なお店とか。
やたら大きな音を立てて鍋を振るけど美味しくない中華料理店のおじいさんとか。
お客には塩対応だけど厨房でおしゃべりばかりしているカレー店とか。
ワンオペで忙しすぎてヒーヒー言ってる定食屋さんのおばちゃんとか。
前を通りかかるだけですぐ声をかけてくる中国料理店のおねえさんとか。
決して美味しいとか清潔とか言い切れない、ちょっといい加減な感じが面白いのです。
こういう話を亡き母に電話でしてあげると、とても喜んでました。
古き街の楽しさ・面白さを、再開発の街に求めるのは間違いです。
新しい街やビルをモダンにするのは当然のこと。
長い歴史があってああなった新橋や上野の街を新規で作るのは不可能です。
東京都庁のポストモダンなんてわざとらしいだけですしね。
今は防災も大事だし、清潔でないといけません。
みんな新橋や上野で食事するときって、心の中では裏がどんなに汚いかを考えないようにしているのだと思います。
アメ横なんて大災害が来たらおしまいだってことも、心のどこかにはあるでしょう。
新しい街がそんなことではダメなのは当然です。
近年、町中華や立ち食いそば店が人気なのは、ツルツル・ペカペカの街が増えている反動ではないのか? なんて思います。
元々あんなのはオヤジしか行かないダサくて汚い店だ、それが若い世代の認識でした。
どうせ食事するならもっと綺麗で洒落たお店にしようよ、あんな古臭いお店は嫌だよ。
そういう空気があったのに、今は逆に若い女性なんかも町中華や立ち食いそば店を面白がっていたりします。
町中華のブログを書いてる人だっていくらでもいます。
BS-TBSの『町中華で飲ろうぜ』の樋口日奈の飲みっぷりとかいいですしね。
ツルツル・ペカペカにはない何かを、若い世代も感じ取っているのでしょう。
そんな流れを再開発をする側も分かってはいるのでしょう。
八重洲ミッドタウンのヤエスパブリックとか、歌舞伎町タワーの新宿カブキhallとか、雑多な雰囲気を狙ってますもんね。
ただこういう新しく作った物に対する違和感っていうのはどうしても残ってしまいます。
たとえば古いホーローの看板をインテリアに使ったところで、それはレトロな雰囲気を狙った小道具でしかないのです。

黄色いテントの町中華にはよく行きました
私が高校生のとき、初めて東京の街を歩き回りました。
地方を転々としていた私の家族が初めて東京に住んだのは1970年代後半のことです。
(母は東京出身者でしたが)
私の高一の夏休みは転校のせいで宿題がない夏休みだったので、何回も東京散歩に行ったのです。
あの頃の私が一番好きだったのは、西新宿の高層ビル群でした。
あのモダンな感じとスケール感は、田舎にはありません。
SFが好きだった私からしたら、西新宿は自分の目で直に見られる未来都市だったのです。
あの頃の私からしたら、自分が大人になる頃の東京はみんな西新宿のようになると思っていたし、そうなるべきだと思っていました。
『鉄腕アトム』とか『2001年宇宙の旅』の世界です。
アメ横は面白かったけど消えゆく街だと信じてましたね。
今でも西新宿を歩くと、十代の頃の感覚が戻ります。
ただ自分が大人になって、西新宿よりアメ横や新橋のほうが好きになるとはねー。
再開発された街を見に行ってお店を見ても、よく分からないメニューがやたら高かったりして近寄りがたいものがあります。
オシャレで若い女性は喜びそうでも、「じいさんに用はない」と言われている気になってしまいます。
ああいった街に、高齢で染みだらけの白衣の料理人がいる「炒飯¥600」なんてお店はないですよ。
「今年の巨人はダメだな!」「お客さんはどこファンなの?」なんて会話もありません。
もしかしたら、お小遣いが乏しい若者だって同じ感覚なのではないですか?
ツルツル・ペカペカで親しみやすさはなく、そこで食事したとしても後で誰かに語りたくなるような面白味もなく。
それでぐるっと一通り見て、座れるスペースで休憩して、地元に帰って牛丼店に行こうと思って去っていくだけ、みたいなー。
再開発が終盤の渋谷だってそうなりそうです。
ではどう再開発するのが正解なのか?
それは私には分かりません。
「古い物はいいんだ」と無い物ねだりをしてもしょうがないのだし、難しい問題です。
ニュー新橋ビル方式で、地元の小さいお店を吸収する形もあるでしょうけど。
都心の不動産が馬鹿みたいに高くなっている今、それも無理そうです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。