スプーキーじいさんって何考えてるの!?

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熊と猟銃

連日のニュースが報じられています。
熊と言っても普通は可愛いイメージが強いですよね。
テディベアとかくまモンとかクマゴローとか、そっち系を思い浮かべてしまいます。
でも実際は、凶悪な爪の生えたラオウに鎧を着せたようなヤツなので、我々に勝ち目なんてまったくないわけで。
「市街地に住んでるから関係ない」とも言えなくて、川沿いに街まで来てしまうこともあるようです。

 

そんな中でついに自衛隊が応援に行くことになりました。
てっきり小銃で熊を撃つのかと思ったら、猟友会のサポートをするそうで。
89式小銃で撃つんじゃないんだ、意外。
それでちょっと調べてみました。

 

 

 

まず日本で狩猟をしている人たちの多くが使っているのが、散弾銃です。
バレル(銃身)の内側にライフリング()が切られていなくて、ショットシェル(散弾、細かい球が複数入っている)を撃つための銃ですね。
一番多いのは12ゲージと言って、口径は18.5mmです。
大きめのスティックのりみたいな弾を込めて鳥や獣を撃つためのものです。
ワッズというプラスチック製のケースの中に弾が入っていて、ワッズごと撃ち出すとワッズはすぐにバラけて弾が飛んでいくという仕組みです。

 

散弾銃の一例

実は散弾銃で使われている弾には色々種類があって、鳥を撃つときは細かい弾が多数入っているのを使います。
動きの早い鳥はそういう弾じゃないと当てるのが困難だからです。
鳥用のショットシェルを「バードショット」と言います。
球の大きさは1mmから4mmくらいまで。
それが一個のショットシェルに数十個から数百個入っています。

 

もう少し大きな標的、鹿とかを撃つときのショットシェルは球の大きさと数が変わります。
ある程度の大きさがないと威力が足りないということですね。
球大きめのショットシェルを「バックショット」と言います(Buck:鹿)。
球の大きさは5mmくらいから9mmくらいまで。
それが一個のショットシェルに9個から18個入っています。
このくらい大きな球だと住宅の壁を突き抜けますので、使用する場面は限られます。

 

そして複数の球じゃなくて一個だけのショットシェルもあります。
そういうのを「スラグ弾」と言います。
でかい弾ですから物凄い威力があって、熊を撃つときはこういう弾を使うのです。

 

スラグ弾の一例、中身が見えるようにガワを剥いてある
右側のグレーの物が弾丸



 

一方、ライフル銃小銃)というのは散弾銃とは別物です。
バレルの内側にライフリングが施してあって、金属の塊であるバレット(単弾、弾丸)を回転させながら発射させる銃です。
ライフル銃は空力的に優れた形のバレットを、バレルを通る間に回転させて撃ち出すことで安定性を増して、遠距離での命中精度を上げています。
一般的なライフル銃の口径は7.62mmです。
ケース(薬莢)は真鍮製なので強度があって、より多くのパウダー(火薬)を詰められます。

 

ライフル銃の一例

散弾銃の射程距離は40m~50mで、特にバードショットは球が小さいだけに空気抵抗で速度が落ちやすいです。
それに対して、ライフル銃の射程距離は300mから4km!!
散弾銃とは構造が違いますからね。
太くて薄くて長い金属製の筒から、複数の細かい球を比較的少なめの火薬で撃ち出すのが散弾銃。
細くて厚みのある長い金属製の筒から、尖った一個の弾を大量の火薬で回転させながら撃ち出すのがライフル銃。
銃身が長いのは、火薬が燃焼して発生するガスによってバレットが押されるときに、押している時間が長いほうが初速が上がるからです。

ライフル用の弾薬の一例

元々がライフル銃って、歩兵に持たせるための武器ですから。
第一次世界大戦の映画なんて見ると、敵も味方も塹壕を掘ってその中からコソコソと遠くにいる敵に向けてライフル銃を撃ったり、時々突撃したりしてますよね。
当時は遠距離での撃ち合いが多かったので、長い射程距離と威力が必要だったのです。
そんな武器ですから、平和な日本では散弾銃は所持しやすいですけど、ライフル銃はハードルが高いです。

 

 

 

さて長くなりましたが、自衛隊が装備している89式小銃20式小銃を熊駆除に使えないのは法律の問題です。
敵国が攻め込んできたときに使うための装備なので、それで勝手に獣の駆除なんてダメですよということですね。
人を簡単に殺せるような武器兵器の使用には非常に神経質にならざるを得ないというのは理解できます。

 

89式小銃

20式小銃

それから、上記の小銃のバレットの問題もあります。
自衛隊が装備しているライフル銃用のバレットって、前半が鉄、後半が鉛、それを真鍮で覆ったものです(フルメタル・ジャケット)。
これは貫通力を重視したバレットです。
発射したバレットがどこかに当たったとき、フルメタル・ジャケットはバレットが変形しにくくなっていて、その分貫通力が増すってことです。
ヘルメット、ボディアーマー、装甲車の外板くらいなら貫通できないと困るわけです。

 

もう一つはハーグ陸戦条約っていうのがあって、敵兵に対して無意味に大きすぎる苦痛を与えるような武器兵器はダメよっていう国際的なルールなのですが。
人にバレットが当たったとき、スルッと貫通するのと、弾が潰れて体の中で弾け飛ぶようなのと、全然違いますよね。
敵兵の体をミンチにしなくても、行動不能にして後方の医療施設に送り込めば十分じゃん、というルールを自衛隊も守っているのです。

 

自衛隊の小銃で熊を撃ったとして。
フルメタル・ジャケットだと、貫通力は高いけどバレットが潰れにくいので威力は低い。
上手く急所に当てなければ、熊を行動不能にはできない。
射程が長いだけに、逸れたバレットが住宅街へ飛んでいってしまう可能性も出てきます。
大型の獣に使うなら、バレットが当たった瞬間に潰れて体の中に留まって飛び散って、全運動エネルギーを体の破壊に使うのが有効なのです。
だからそういう用途のための「散弾銃にスラグ弾」が熊には最適ということですね。
熊にも色々種類があるみたいですけど省略

 

あと自衛隊員は自然の中で野生動物を仕留めるような訓練は受けていません。
ベテランのハンターが持っているスキルにはかなわないのです。

 

※もちろんライフルで潰れやすいバレットを撃てば熊には有効です。
 自衛隊がそういう弾薬を装備していないということですね。
 もし警察がそういう弾薬を持っているのなら、ライフルを使用する可能性はあるでしょう。

 

 

 

もう一つだけ。
「じゃあ警察官の持ってる拳銃はダメなの?」
はい、ダメです。
まず法律では、警察官の拳銃は人間に対して使うこととされています。
ただし、市民が熊に襲われそうになっているのを助けるとか、緊急避難として使われる場合は許される可能性があるそうです。
発砲した警察官の刑事責任を問われる可能性は残りますが。

 

それから拳銃の威力の問題。
警察官が装備している拳銃は、SAKURA M360JS&W M360)かニューナンブM60です。
使用する弾薬は.38スペシャル弾、世界中で使われているリボルバー拳銃用の弾ですね。
この弾、もちろん撃たれたら死んでしまう可能性はありますけど、ライフル銃に比べたら威力は弱いです。
仮に拳銃やサブマシンガンをジャングルで撃ったとして、弾は木々に当たって止まります。
ライフル銃ならそういうのを通り抜けて敵兵まで届く威力があるのです。
拳銃と同じ弾を使い連発できるのがサブマシンガン
警察官が使う拳銃にそこまでの威力は必要ないということですね。
熊に撃っても大した効果はないでしょう。

 

SAKURA M360J

ニューナンブM60

 

 

 

長々と書きましたが、要は「道具は目的に合わせて選べ」ということです。
今回色々調べてみて勉強になりました。
もちろん私が銃を撃つようなことは一切ないですし、そんな日本になってほしくないのは当然です。
平和で安全な世の中で、トイガンをいじって楽しむ程度がいいのです。
熊だって森や山の中にいてくれればいいのにね。

 

 

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。