スプーキーじいさんって何考えてるの!?

貧乏・暇なし・不健康。一人暮らしのじいさんのブログです。このブログに広告とか金儲けは入っていません。

マンネリって、何語なの?

たまにはアートの話をしましょうかね。

 

 

 

みなさん、「マンネリ」って言葉はご存知ですよね。
一応書くと、「同じことが続いてガッカリ」みたいな状況のことです。
例えば、
「今日もカレーかよ、料理がマンネリだなぁ」
とかね。
このマンネリって何語か、語源は何かご存知ですか?

 

マンネリという言葉は英語の、
マンネリズム(mannerism)
から来ています。
(発音的には「メナリゾン」みたいに聞こえます)
で、マンネリズムはイタリア語の、
マニエリスム(manierismo)
が元になっています。
更に、マニエリスムという言葉はイタリア語の、
マニエラ(maniera)
から作られた言葉です。

 

マニエラというのは色々な意味のある言葉ですけど、この場合は「絵画の技法」、つまり絵の描き方のことです。
西洋絵画の技法の話から生まれた言葉が、マンネリなのです。
その辺りを解説しましょう。

 

 

 

西洋絵画は、14世紀のジョットや15世紀のマサッチオが奥行きや遠近感を描くようになることで、従来の平面的な絵画から大きく変化しました。

 

・ジョット : 「彫りの深い岸部一徳」みたいな顔の人。ハレー彗星の絵を初めて描いた。

『東方三博士の礼拝』 ジョット

 

・マサッチオ : 「加藤浩次の弟」みたいな顔の人。この名前は実はあだ名で「不格好」という意味。

『影で病人を癒す聖ペテロ』 マサッチオ

 

数年前に、ジョットのお師匠さんのチマブーエの絵が、イタリアのおばあちゃん家の台所から見つかって29億円で落札されたなんてニュースがありましたな 。

 

・チマブーエ : 残念ながら顔は不明。西洋絵画を始めちゃった人。

『聖母と天使たち』 チマブーエ

 

 

 

そしてその後のルネサンス期に何人かの巨匠が登場し、西洋絵画の技法は飛躍的に進歩し、一度完成されてしまうのです。
そんな巨匠たちをご紹介しましょう。

 

レオナルド・ダ・ヴィンチ : 「年老いてヒゲボーボーな武田真治」みたいな顔の人。実は美少年が好き(ダヴィンチがね)。

『最後の晩餐』 ダ・ヴィンチ

 

ミケランジェロ・ブオナローティ : 「なすびのおじいちゃん」みたいな顔の人。「悩み苦しむマッチョ」を好んで描いた。

システィーナ礼拝堂天井画』 ミケランジェロ

 

ラファエロ・サンティ : 「実写版『頭文字D』の藤原拓海」みたいな顔の人。モテモテの恋多き男だが性病をもらって早死したらしい。

『小椅子の聖母』 ラファエロ

 

ティツィアーノ・ヴェチェッリオ : 「女だったら絶対に魔女」みたいな顔の人。とても裕福で凄く長生きした。

ウルビーノのヴィーナス』 ティツィアーノ

 

サンドロ・ボッティチェッリ : 「佐藤健の父ですが何か?」みたいな顔の人。生涯独身だったために同性愛者疑惑で誹謗中傷されてしまった。

ヴィーナスの誕生』 ボッティチェッリ

 

ルネサンス期の巨匠たちの作り出した技法のことを「ベルラ・マニエラ(bella maniera、美しい様式)」と呼びます。
早い話が、自然や人間は神様が作ったものだから、そのまま写実的に描くこと=美であるという考え方に基づいていたわけです。

 

 

 

巨匠たちにより、それ以前とは違った素晴らしい絵画が多数登場した後、「今はこういう描き方がナウいんだぜ」みたいに、新しい描き方そのものを見せようとする画家が出てきます。
当然ながら、注文主である王侯貴族からのリクエストもあったわけで。

 

例えばラファエロの聖母子像みたいな、滑らかなグラデーションによる柔らかく温かみのある肌の表現は素晴らしいですけど、それをあまり強調しすぎると金属のような冷たい感じになってしまいます。

『ガブリエル・デストレとその妹』 作者不明(フォンテーヌブロー派)

何やってんだか……(笑)

 

こうして、ルネサンス期の巨匠たちのフォロアーの作品は、上の例のようにラファエロの温かみのあるグラデーションを強調しすぎるか、ミケランジェロの人体の描き方(うねるマッチョ)を強調しすぎてデフォルメされたS字型の人体になってしまうかしたのです。
こうした絵画の技法を「冷たいマニエラ」なんて言ったりします。

 

少し例を挙げてみましょう。

エル・グレコ : 「佐々木蔵之介が長生きしたらこうなる」という顔の人。いつも歌いながら描いていたらしい。

『三位一体』 エル・グレコ

 

アーニョロ・ブロンズィーノ : 「引退したサンタさん」みたいな顔の人。頭が良くて性格も良かったとか。

『愛の勝利の寓意』 ブロンズィーノ

 

ジュゼッペ・アルチンボルド : 「シリアスな高橋幸宏」みたいな顔の人。イベントのプロデューサーとしても活躍。

『ウェルトゥムヌスとしての皇帝ルドルフ2世像』 アルチンボルド

 

 

 

こうした流れを見た17世紀の評論家・ピエトロ・ベッローリは、巨匠のフォロアー達をただ技法を模倣するだけの下らない連中と決めつけて、彼等のことを「マニエリスム」とカテゴライズし批判しました。

「巨匠と似たような絵ばっかり描きやがって!」

っと言ったかどうか知りませんけど、マニエリスムという言葉には批判的な意味が込められていたのです。
そしてその言葉と意味は英語圏へと伝わり、更に日本へと持ち込まれ、マンネリという言葉が生まれたわけです。

 

20世紀になり、マニエリスムの画家たちに対する批判は間違っているという考え方が広まり、彼等の作品はやっと評価されるようになりました。
不自然な表現があったとしても、それも個性だと認められたわけです。

 

みなさんもご家族が作ってくれた料理についてただ批判するのではなく、

「巨匠の技を取り入れつつ、個性も十二分に出していて秀逸……」

「まったりとしていながら、少しもしつこくない……」

「やーまーおーかー!!」(by 富井副部長)

とかって褒めてあげてはいかがでしょう(?)。

 

 

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。