スプーキーじいさんって何考えてるの!?

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宮崎アニメと私

宮崎駿監督のアニメ映画『君たちはどう生きるか』が公開されました。
私は観る予定はないです、テレビで放映されたとしても見ないと思います。
アニメは基本的には好きですけど、宮崎アニメはもういいです。
今回は宮崎アニメに対する私の想いを書きます。
長いです、あと宮崎駿ファンは読まないほうがいいかも。

 

 

 

昔アニメファンをやっていた私が宮崎駿の名前を知ったのは、一般の人達よりも早かったです。
機動戦士ガンダム』の頃(高校生でした)から周囲のアニメファンとアニメの話をするようになり、アニメ誌も買うようになって、宮崎駿の名前も知りました。
(『宇宙戦艦ヤマト』の頃はまだ子供だったし情報も少なかったのです)
アニメ誌「アニメージュ」で『風の谷のナウシカ』の連載が始まったときのこともよく覚えています。
世間での宮崎氏の知名度が上がったのは、やはりアニメ映画『ナウシカ』以降でしょうね。
作品ごとに順を追って書きましょう。

 

 

 

1.風の谷のナウシカ

マンガ版を読んでいて観たので、王蟲の暴走をクライマックスにしてコンパクトにまとめた映画だと思いました。
そして映画版のナウシカというキャラが、ちょっと感情的で子供っぽい性格に変えられたとも思いました。
マンガ版のナウシカはしっかりした大人ですから。
それと宮崎駿作品にしては作画のレベルがイマイチだとも思いました。

 

物語は正直行って、お涙頂戴です。
クライマックスで死んだナウシカが生き返るとか、私は観ていて冷めました。
そしてあの映画の中のナウシカは異端です。
ナウシカ以外のほとんどの人々は今と変わらず、間違いなく歴史は繰り返すしかありません。
そんな中で蟲を愛し、腐海に親しみ、人々を導こうとするナウシカは浮いています。
映画の中で大活躍する姿はまるでスーパーマン
あの映画の後でいずれナウシカも亡くなるでしょう、その後がどうなるかは明白です。
焼け石に水」の水なんですよ、ナウシカって。
そういう人類に対する絶望感を私に持たせた映画だったと思います。

 

 

 

2.天空の城ラピュタ

私はこの映画が大好きです。
宮崎駿に望んでいるのは、こういうエンタテインメント作品です。
映画館に観に行ったときに私は既に社会人でしたが、夏休みにこの映画を観に来た子供達がドキドキ・ワクワクして、後で友達と語り合う姿が目に浮かぶようです。

 

ツッコミどころはありますけどね、例えばタイガーモス号が東に向かっているのに太陽が横から昇るとか。
(ネットでこの間違いを詳しく書いている人が結構います)
まぁそれはそれ、大筋には影響なし。
それと、ラピュタに到着した主人公の二人がロボット兵に墓地に連れて行かれて、シータがロボット兵から花を受け取るシーンは『フランケンシュタイン(1931年)』ですよね。

 

 

 

3.となりのトトロ

昭和30年代の日本の郊外を舞台にした映画で、よく出来ていると思います。
ただ私はあまり好きではありません。
ガラガラの劇場で観たときから思っていることがありまして。
(『トトロ』はテレビで繰り返し放映されたことで日本中に広まったが、公開時は閑古鳥が鳴いていた)

 

トトロなどのもののけというのは、サツキとメイという二人の幼い少女に精神的危機が訪れたときに発生する脳内麻薬のようなものです。
あの年齢で母親が入院していて、いつ退院できるか分からないというのは、物凄いストレスになっているはず。
周囲に頼れる大人がおらず、ストレスが頂点に達すると自己防衛のために出る脳内麻薬のような幻(まぼろし)なんだと思います。

 

宮崎監督は間違いなくそれを意識して作っていて、ただフワフワしたエピソードを繰り返す映画では軽くなってダメだという趣旨の発言もどこかで読んだ記憶があります。
裏にある暗くて重いものを描くことで、表が映えるのだと。
冒頭の引っ越しの場面から二人はハイテンションですけど、当然無理にそうしているわけで。
サツキなんかはいたらぬ父親の代わりに食事まで作ったりしていて、とても可哀想です。
(宮崎監督はサツキは将来グレると発言しています)

 

二人の心の支えになっているのは(エンディングでも出てきますが)、母親と一緒の布団で読んでもらった絵本、『三びきのやぎのがらがらどん』です。
この絵本が二人にとっての大事な大事な母親との想い出なのです。
心の中にしっかりとあるから、二人はこの絵本に出てくるトロルの幻を見るのですよ。

 

ラストで病院にいる両親が登場しますが、私はあれは二人の見た幻だと思っています。
二人はメイが持ってきたトウモロコシを母親に食べてもらって元気になってほしいわけで、しかもそれを二人が持ってきたことに気付いてほしい。
だから、両親がそれに気付いて満足する幻を見たということです。
でなければ、夜に遠い病院まで勝手に来てしまった娘たちを父親が探さないわけがありません。

 

こういう解釈をしている人は結構いて、この映画を単純に楽しいお話として観られなかったりします。
全体的に重い不幸を背負った二人の子供の物語なので、観ていてしんどいです。
私は、ラストでお母さんが帰宅する絵があって本当に救われました。

 

 

 

4.魔女の宅急便

私的には、一番事前の下調べをして観た映画です。
それで後悔して、以後は下調べは最低限に留めるようにしています。

 

この映画の原作は童話です。
童話を宮崎アニメにすると、細かいところまでリアリティが立ち上がってきます。
宮崎監督は『まんが日本昔ばなし』みたいには出来ないでしょうね。
その違和感が面白くて、前半は楽しく観られました。
この映画みたいに細部をきちんと描いた作品は本当に楽しく観られます。

 

ところが、中盤でキキは飛ぶことが出来なくなってしまいます。
「え、そういう流れにしちゃうの?」
そう思って、キキがどうなって終わるのかと思っていたら。
クライマックスで、キキはデッキブラシにまたがって十秒かそこら力んだだけで飛べてしまうのです。
あまりに軽い問題の解決。

 

宮崎監督は、ジブリ若い女性アニメーター達を見て、絵を描くことだけを武器に東京に出てきて頑張っている姿からこの映画を作ろうとしたようです。
彼女等にとって、飛べなくなるとは「絵を描けなくなる」「自分の絵が通用しなくなる」というレベルの不幸です。
キキは夜に裏の傾斜地で繰り返し飛ぶ練習をしたけど飛べず、ついには大切な母親のほうきを折ってしまうのです。
どれだけの絶望がキキを襲ったのか。

 

私は映画館でこの映画を観ながら、キキは飛べない自分の将来をどう選んでいくのか、そういうエンディングを期待していました。
だから、簡単に飛べてしまったことで膝の力が抜けるような脱力感を覚えたのです。
そりゃないぜ……
まるでTVアニメ『未来少年コナン』で、ラナを抱きかかえたコナンが三角塔から飛び降りたシーンのようで、一番やってはいけないパターンだと思いました。

 

宮崎監督は実は当初、飛べなくなったキキが老婦人に呼ばれてケーキをプレゼントされる辺りまででこの映画を終わらせるつもりだったようです。
そこへ鈴木プロデューサーが口を挟んで、最後に大きな出来事を持ってきて終わらせたほうがいいと言ったとか。
確かに盛り上がりはしましたけどね。
ちなみにあの飛行船の事故は、実際にあったことで映像も残されています。
その事故では二人の男性がロープにつかまって釣り上げられて、二人共落下して死亡したそうです。

 

 

 

5.紅の豚

元々はモデルグラフィックス誌に掲載された短いマンガで、JALが機内専用の短編映画にしてくれとオーダーしたのですが、盛り込み過ぎて映画館で公開されることになったものです。
これも人気のある作品ですけど、私はついていけませんでした。
「カッコイイとは……」って、これ古すぎるでしょ。
この映画を観て、宮崎監督は現代社会に向き合わず、昔ばかり描く人なんだと思いました。
年寄りの昔話なんて、聞き終わって現実に帰れば虚しいだけです。
昔に戻るなんて無理なのに、昔は良かったと言うことにどれだけの価値があるのか。

 

それと、主人公が魔法の力で豚になっている設定って、あの短いマンガならまだしも映画にしてしまうと無理があります。
普通の人間の男性だと生々しくなりそうだけど、だからって妙にコミカルな要素を入れられても違うと思うのです。
もちろんこれは私の感覚であって、大勢が評価している作品なのだからこれでいいのでしょうけどね。

 

ポルコがフィオに語る想い出話がありますよね。
若い頃に戦争に行って、戦闘中に意識を失って見た幻の話です。
あれをもし仮に、豚のポルコでやったら台無しですよね。
私が言いたいのはそういうことです。

 

あとこの映画、宮崎監督にしては珍しく間が悪くてギャグが滑ってました。
例えば冒頭、ポルコが飛んでいって客船の上空に来たときに、船員が並んで空賊が逃げた方向を示すシーンなんて、本当はぷっと吹き出すような場面なのに。
全体的にテンポが悪かったと思います。

 

 

 

6.もののけ姫

宮崎監督の迷いが出てしまって、物語としては失敗したと思いました。
物語を最後まで決めずに作り始めるジブリのシステムの欠点が出たといいますか。
大勢がバタバタと動き回ったけど、その結果大きな変化がないような、オチのない他人の夢の話を聞かされたような映画じゃないかと。
もちろん現実はそんなものです、ただ映画でまでそれをやられてしまうとしんどいです。

 

宮崎監督はこの頃からでしょうか、エンタテインメントはやめて自分の好きなように作ると発言していました。
彼の中では『ラピュタ』のような作品はもう沢山なのでしょう。
私はこの映画を観て、そろそろ宮崎アニメは自分には必要なくなってきたかなと思ったものです。

 

 

 

7.千と千尋の神隠し

この映画は、上記のことからテレビで観ました。
もう私に、宮崎アニメを観るために映画館へ行くほどの勢いはなかったです。
色々なイメージが次々と出てくる興味深い映画ですけど、だからどうしたというのが正直な感想です。
これこそ監督の見た夢を見させられているような作品であって、観客にそれを勝手に解釈しろと言われているみたいでした。
私はそんなのいりません。
もう私には宮崎アニメは不要なんだと確信させられた映画ですね。

 

 

 

以後、宮崎アニメは観ていません。
ただ一応書いておきますけど、宮崎アニメを全否定するつもりはないですし、ファンを馬鹿にするようなこともありません。
あくまで個人的な感想であって、それを他人に押し付けることはしません。
世間でよくある「100点か0点か」という考え方が私は嫌いで、物事はそんなに単純ではないと思っています。
私にとって必要がない作品でも、必要とする人はいる。
そこはご理解いただきたいと思います。

 

 

 

暑い日が続きます、ご自愛ください。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。