モデルの前田典子さんが二科展に入選したそうです。
それから秋川雅史さんも。
おめでとうございます。
では今回はこの二科展について書きましょう。
毎年秋になると開催される展覧会、二科展。
これは、新美こと国立新美術館で開催される公募展のことです。
よく芸能ニュースで「タレントの誰それが美術展で入選した」というのがありますが、あれは大概は二科展のことです。
変わった名前ですけど、「二科」って何のことかご存知ですか?
(「ニシナ」じゃないよ(笑))
国が主催する美術展のことを「官展」と言います。
西洋美術史によく出てくるパリの「サロン(サロン・ド・パリ)」もそうですし(後に民営化)、日本にも明治時代からありました。
最初は
「文展(文部省美術展覧会)」
大正時代に入り
「帝展(帝国美術院展覧会)」
昭和に入って
「新文展(新文部省美術展覧会)」
戦後に
となり、昭和33年に民営化。
この名称の変遷の裏には、色々と揉め事もあったようです。
大正時代の文展では、日本画は伝統的なものと革新的なものの二科に分かれていたのに、洋画は一科でした。
山下新太郎などの新しい洋画を目指していた画家達はこれ(特に審査)に不満で、二科にするよう求めたものの拒否され、文展から離れた自分達の団体を立ち上げます。
これが二科会で、二科会が開催する美術展が二科展です。
名前の由来、分かって頂けたでしょうか?
二科会が出来た頃は絵画は見るのも描くのも人気があって、二科展にも多くの出品があったそうです。
その伝統があってか、二科展には庶民的なイメージがあります。
日展は毎年11月の文化の日前後に新美で開催されていて、日本三大公募展(日展、院展、二科展)の一つとなっています。
そして二科展も、この「三大」に入っているかなり規模の大きな美術展なのです。
(「院展」は日本美術院の美術展のこと。岡倉天心が作った美術団体で、一度解散し、文展に不満があった横山大観らが再興した、日本画の世界を代表する団体であり美術展)
(規模で言えばあと「国展(国画会)」があります)
(巨大な新美の3フロア全部を使うのは日展・国展・二科展だけです、しかも作品の間隔が狭く凄い数で、ざっと見るだけで相当疲れます)
美術団体は会員を増やさないといけません、自分達が開催する公募展は新人の獲得が目的です。
ですからやる気のある新人に対しては門戸を開き、ベテランのアドバイスを受けやすくしています。
芸大や美大で学んでいる学生さんはともかく、趣味で描いていて本気モードの人にとっては有り難い存在であると言えます。
近年は芸大や美大の学生がこういった団体(画壇)を頼らなくなる傾向があって、自分で画廊と交渉して個展を開いたり、ネットで世界に発信したりすることが当たり前になっています。
会員数を減らし弱体化するのを防ぐために、やる気のある芸能人を引き寄せ、広告塔にすることは安易に想像できると思います。
絵を描く芸能人にしても、大規模な美術展で入選したとなれば、箔が付きます。
二科展に入選することはそれほど難しいとは言えません、費用も大したことないし。
15歳以上なら出品できて、出品料は¥8,000、但し35歳以下は半額です。
(作品の持ち込みや持ち帰りは自分でやります)
会員による審査があって、入選すれば二科展に展示されるわけです。
入選したからって絵で食っていけるわけはないけど、まぁやる気はあると考えていいでしょう。
二科会側からすれば入選には「あなたは見込みがあるから頑張って、フォローもするよ、将来は二科会の会員になってね」という思惑があるのです。
芸能人で一番頑張ってるのが工藤静香。
確か20回以上入選した上に特選も取って、絵画部の会友(準会員のようなもの、出品すれば即展示される)になっています。
入選より連続入選、そして受賞することが大事で、工藤静香の絵はあまり評判がよろしくない(私も嫌い)ですけど、特選を取るというのは凄いことなのです。
(11の賞があって、特選は下から三番目、一番上になるのは「内閣総理大臣賞」です)
(自分が趣味で油絵を描いてると仮定して、毎年毎年美術展に出品する作品を描き続けるのがいかに大変かは分かると思います)
ちなみに元欅坂46の佐藤詩織は武蔵野美術大学を卒業していて、二科展ではデザイン部で入選して新人奨励賞を取っています。
元乃木坂46の若月佑美は美大を目指した過去があって、繰り返しデザイン部での入選を果たして特選も受賞し、デザイン部の会友になっています。
この二人も「趣味のお絵描き」程度ではないようですね。
二科展のこと、大体はご理解頂けたでしょうか?
今後芸能人が美術展で入選したというニュースを見たときには、この解説を思い出してください。
ただの入選なのか、連続何回の入選か、どの賞を取っているのか。
ここがポイントです。
ついでに豆知識。
毎年開催される美術展がアニュアル。
毎年二回開催される美術展がバイアニュアル。
二年に一回開催される美術展がビエンナーレ。
三年に一回開催される美術展がトリエンナーレ。
四年に一回開催される美術展がクアドリエンナーレ。
これらは特定の美術展を指す言葉ではなく、「○○ビエンナーレ」という使い方をします。
吉野家のテストメニューのミロトン(¥657)を食べてきました。
トマトの酸味が強く、そこへピクルスが追い打ちをかけてきます。
このソースの中には牛丼の上が入っていますが、全部が酸っぱいトマト味。
これはちょっとなぁ、ビタミンは取れそうだけど。
最後まで読んで頂き、ありがとうございます。