スプーキーじいさんって何考えてるの!?

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映画と私 5

(タイトル編集しました)

 

今回は前回に引き続き、『ブレードランナー』の話を書きます。
今回は舞台裏のことを中心にしましょう。

 

 

 

この映画の原作とされているのは、フィリップ・K・ディックの『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』というSF小説です。
これ、読んでみると分かりますが映画とはかなり違う内容です。
ディックは『アンドロイドは~』の映像化を長く断り続けていて、この映画化の話でやっと承諾しましたが(1977年)、その中身がどうなるのかをかなり不安視していたそう。
だから色々と口を出し、この小説を未読だった監督のリドリー・スコットともディスカッションを繰り返し、そのお陰でなんとかなりそうだと思えるところまで行けたそうです。
しかしディックはこの映画の完成前に亡くなっています。

 

ブレードランナー」というのは主人公・デッカードの職業の名前です。
脱走したレプリカントを探し出し処分する警察官ですね。
これは、ディックとはまったく別の作者のSF小説に登場する造語を、スタッフが「『ブレラン』の主人公の職業にピッタリ」ということで正式に借りたもの。

 

レプリカント」とはこの映画に登場するアンドロイドの商品名です。
これは「レプリケーション(細胞複製)」という生物学の用語から作られた造語です。
脚本家のお嬢さんが生物学を学んでいたところから来たそうです。
監督は「アンドロイド」という手垢の付いた言葉を使いたくなかったのです。

 

ブレラン』のポストモダンな世界観、ハードボイルドなSF映画っていうアイディアは、最初の脚本を書いたハンプロン・ファンチャーが提案したもの。
(後に交代させられた)
ファンチャーはフランスのBD(ベーデー、バンド・デシネの略、フランスの伝統的なコミックのこと)の巨匠・メビウスの作品でそういう世界観を知り、この映画に使えると思ったらしいです。
そのメビウスは、同じBD作家のエンキ・ビラルからイメージを得たと言っています。

 

 

 

ブレラン』のスタッフは錚々たるメンバーです。

監督:リドリー・スコット

  美術を学んだ後にCM制作を手掛け、映画の世界に入り『エイリアン』を大ヒットさせた人。映像美のこだわりが凄すぎてトラブルになりがち。この人あっての『ブレラン』。

 

音楽:ヴァンゲリス

  言わずと知れた、シンセサイザーを駆使して重厚な音楽を作る人。『炎のランナー』の劇伴は特に有名。ちなみに最初に出たこの映画のサントラは「オリジナル」ではなく、1994年に発売されたものがオリジナルと言えるもの。

 

美術デザイン:シド・ミード

  この映画以降は映画に参加する際は「ビジュアル・フューチャリスト」という肩書を使う。未来感あふれるメカやビジュアルを描く一方で、この映画のLAの世界観も構築した。『∀ガンダム』もこの人のデザインで、みなさんどこかでこの方の絵を見ているはずですぞ。

 

衣装デザイン:メビウス

  前述のメビウスははじめはデザインで参加を要請されていたが別の映画制作のために参加できず、衣装デザインのみの参加となった。大友克洋宮崎駿との関係性も有名。

 

VFX:ダグラス・トランブル

  「私と映画 2」で取り上げた伝説の名画『2001年宇宙の旅』のVFXを担当した人。その他多数の物凄い仕事をしたのだから神ですよ、きっと(笑)。

 

 

 

さて今回も長くなりそうなので、ここでオマケを。
この映画の中には遊びが多く含まれています。
例えば、最初にスピナー(空飛ぶパトカー)が登場して垂直上昇していくシーンで、コクピットのパネルに表示される映像は『エイリアン』で使われたものです。

ブレラン』のスピナーのパネル

『エイリアン』の救命艇ナルキッソス号のパネル

 

スピナーから見下ろしたLAの街の中に、『スターウォーズ』のミレニアム・ファルコン号があります。

黄色い線で描いたところに、上向きになったファルコン号がある

 

スピナーが降りていく円筒形のビル(警察署)の屋上部分には、『未知との遭遇 特別編』で使われたマザーシップの内部の天井部分が使われています。

警察タワーの屋上

 

 

 

この映画を作り始めた初期段階では、冒頭に本編では採用されなかったシーンがありました。
それは、農場らしき場所に立つ丸太小屋から始まるのです。

ボツになったシーンの絵コンテ

帽子を被っているのがデッカード
フィリップ・マーロウのイメージ?)
誰もいない小屋の中で、火にかかった鍋でスープが煮えています。
そこへ住人と思われる男が入ってきて……

 

ブレラン』の続編の、『ブレードランナー2049』を観た方ならお分かりになるでしょう。
このボツシーンは、『2049』の冒頭で登場するのです。
ブレラン』ファンのためのオマージュなのでしょう。
私は映画館でそれを見て、「おおっ! 粋なことするんだなー!」って思いましたよ。

 

 

 

さて、今回はこの辺で。
なるべくネタバレを避けるために、物語から離れた部分を書きました。
この続きはまた今度。

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。