スプーキーじいさんって何考えてるの!?

貧乏・暇なし・不健康。一人暮らしのじいさんのブログです。このブログに広告とか金儲けは入っていません。スターは一個だけ付ける主義です。

調味料ゲーム

以前、リーマンショックの後のことです。
リーマンショックで職を失った私は、知り合いのツテで居酒屋で働いていました。
昼間に就職活動をして、夕方からはお店で働くという生活で、これが半年続きました。
お店は雇われ店長が料理を全て作り、私はドリンクとホール、あとアルバイトが何人かホールで入っていました。
チェーン店と違って店長の創作料理は中々魅力的でした。

 

※それにしても、居酒屋のドリンクなんてものを未経験の私によく作らせたものです。
 私はネットでレシピを調べて、Excelにまとめてプリントして厨房に貼って対処しました。

 

このお店は店長の人柄のおかげで、働きやすい環境でした。
頭のいい方で、誰であろうと良いことは良い、悪いことは悪いという理屈が通用するのが有り難かったです。
ユーモアもあったし、優しい方でした。
また、お店が新規開店だったのも働きやすさに繋がったと思います。
閉店後の賄いがまた良くて、凝り性の店長は色々な料理を作って食べさせてくれましたよ。

 

 

 

 

そこは新しいお店だっただけに、初期は中々お客様が集まらなくて苦戦していました。
ヒマすぎて、近くの駅前でビラ配りしたこともあったくらいです。
その後徐々にお客様が増えてきて軌道に乗りました。
あとランチ営業も始めて、こちらは盛況でした。

 

そのうち、夜の部によく来店してくださるお客様グループができました。
いつも四名でおそらく五十代で、週に一回から二回は来てくれてました。
有り難いのだけど、これがちょっと困ったお客様で。
グルメぶる人達だったのです。
お出しした料理やドリンクについて、あーでもないこーでもないって話していて、大声だからこちらにもしっかり聞こえてて。
庶民的な居酒屋でそういうことを言ってもしょうがないし、文句があるなら高級店に行ってくださいって思ってました。
店長なんてモロに嫌ってましたね。

 

 

 

お店には居酒屋によくある、箱入りのワインをグラスに入れてお出しする安いグラスワインと、ボトルでお出しする¥3,500のちょっといい赤ワインがありました。
店長が選んできた、コスパのいいワインでした。
店長には和洋両方の長い経験があった
そのボトルの赤ワインをグルメグループがオーダーしたことがあって。
喜んでお出ししたら、なんだかリアクションが微妙でした。

「……う~ん」

「ぬるいね」

「冷えてないね」

どうやらワインが冷たくないのが不満のようでした。

 

とんだ勘違いですね。
白ワインは冷蔵庫で冷やしてそのまま飲むものです。
赤ワインはモノによりますが、一般的には保存は冷暗所、飲むときには常温に戻してからです。
ただし二千円以下の安い赤ワインは、冷たいままで飲むほうが美味しいのです。
こんなのグルメじゃない私だって知っていることです。
店長だっていい状態で飲んでもらえるよう、きちんと準備しておいたのです。
グルメグループのリアクションを見ていた店長、こっそり笑ってましたよ。

 



 

それでお店に来なくなるかと思ったら、そのグルメグループはまた来店してくださって。
まったくどういう気持ちでお店に来ていたのか、私は今でも不思議です。
それは店長も似たような考えだったと思います。

 

その晩はお店が空いていて、そのうちお店はグルメグループだけになってしまいました。
店長はヒマになって前に出てきて、グルメグループと世間話なんてしてました。
そのうち、酔ったグルメグループの自慢話が始まって。
一人が「俺は料理を食べればどんな調味料を使ったか分かるんだ」と言い出すと、他のメンバーも同意しだして。
私は「へぇ」なんて思って聞いていましたが、店長は急にゲームをやりましょうと言い出しました。
これから簡単な料理を(無料で)お出しするので、使っている調味料を当ててください、そういうゲームを提案したのです。

 

普通、プロの料理人にこんなことを言われたらやらないですよね。
私なんて絶対に勝てるわけありません、恥をかくだけです。
それなのにグルメグループはやる気満々で。
酔っているとはいえ、この人達大丈夫なのか? って思いました。
店長はすぐ厨房に入り、何かを作っていました。

 

 

 

しばらくすると店長が小鉢に入れた料理を人数分持って出てきました。
パッと見、野菜炒めのような料理でした。
グルメグループはそれぞれがじっくり味わうように料理を食べ始めました。
そして口々に、使っていると思われる調味料を言い始めました。
そばに立っていた店長はそれを聞いて、「正解です」「正解です」と応えていました。
中々やるじゃん、言うだけのことはあるな、そう思ってゲームの行方を見ていた私。

 

しばらくして、グルメグループからの回答が途絶えました。
もう全ての調味料を言い当てたと、そういう空気になりました。
そこで店長が一言。

「あともう一つ、使った調味料があります」

でも結局、グルメグループからは何も出てきませんでした。
店長は回答が出尽くしたことを確認してから言いました。

「味の素ですよ」

グルメグループからは驚きの声が上がりました!

 

 

 

グルメグループが帰った後、片付けをしながら店長は話してくれました。
味の素は批判されることも多いけど、実はほとんどの飲食店で使われていると。
それが分からないのだから、彼らも大したことないなって。
なんか、自分のことじゃないのに妙に恥ずかしくなってしまいましたよ。

 

そしてその後も、グルメグループはお店に来てくださいました。
まったく、どういう神経をしているのでしょうね(笑)。
店長も、彼らがお店に来ないようにゲームを仕掛けたのに。

 

 

 

味の素批判って、私はどうかと思っています。
うちの母は味の素を使っていましたから、私なんて60年以上も味の素を口にしているわけです。
それで体のどこかが悪いわけではなく、病院通いも定期的に薬を飲むこともなく生きています。
調べてみたら、味の素が体に悪いという説に科学的な根拠はなく、おそらくは商品名を出せないNHKが「化学調味料」と呼んだことから来ているのではないか、とのこと。
今は「うま味調味料」と呼ぶ
それに本当に体に悪いのなら、厚労省が禁止するはずですよね。
どちらにしろ、なんだって過剰に摂取すれば体に悪いのは当然のことです。

 

 

ま、好みも考え方も人それぞれ。
お互いに干渉し合わないのが今のマナーです。

 

 

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。