スプーキーじいさんって何考えてるの!?

貧乏・暇なし・不健康。一人暮らしのじいさんのブログです。このブログに広告とか金儲けは入っていません。

『孤独のグルメ』と私

こないだバスに乗っていたら、前の席にいたインド系の若い夫婦が、それぞれのスマホでドラマ『孤独のグルメ』を見ていました。
二人共集中している感じで、海外の人達にも人気があるのかな? と思いました。
松重さんは美味しそうに食べますからね。
(吹き替えや字幕ってあるのでしょうか?)

 

それと、考えてみればあのドラマは、日本の食文化のガイドみたいなものですよね。
どういうお店にどういう料理があって、入って着席してからどう食べればいいのかまでを細かく描写していますから。
我々だって海外へ行けば、どのお店に入ればいいのか、どう食べればいいのか、わからないことって多いです。

 

 

このドラマの原作がマンガだということは有名です。
久住昌之・原作、谷口ジロー・作画で、最初に発表されたのは1994年のことです。
当時の私には、泉昌之ではなかったのが結構意外でした。
谷口ジローを作画にしたのは編集者のアイディアだったとか)

 

私は当初、このマンガに興味を持ちませんでした。
その後2000年頃に書店で文庫版を発見して、何となく購入。
文庫であの厚さで一冊で終わる手軽さを気に入ったと記憶しています。
あと表紙の写実的で大友克洋的なテイストも良かったです。

読んでみたら面白かったです。
井之頭五郎という中年の男性が、表情をあまり変えず、ほとんど話さず、ただ頭の中で色々考える。
こんなマンガがあったのかと、嬉しくなりました。
そして自分も同じように生活していることに気付きました。
それと、最初の単行本と文庫版にのみ収録された旅エッセイは最高でした。

孤独のグルメ』第17話より

 

早速、話が合う母に貸してみたら、やはり大喜び。
母も同じように、男は無表情で無言だけど何を考えて生きているのか? と思っていたようです。
だから「こんなこと考えてるんだ」と面白がりました。
(母があまり外食をしてこなかったことも、興味を引いたと思います)


そういえば、私は母の料理を食べても何も言わず、ずーっと後になって美味いだの嫌いだのと言って、母を怒らせたものです。
「どうしてその時に言わないの?」とは、その時の母のセリフ。
ああ、言えばよかったんだ(笑)。

 

 

 

このマンガがドラマ化されて、最初は見ていました。
でも原作とは違っていて、ガッカリしました。
井之頭五郎松重豊に演じさせたのは明らかにミスキャストだし、お店や料理のチョイスがあまり一般的ではなく、想像しづらい面があったからです。
マンガのほうは誰でも想像がつくような料理を在り来たりなお店で食事するからこそ、五郎のモノローグが面白く感じられるのです。

 

別のメディアで別の人間が作っているのですから、同じものにならないのは道理です。
また、同じものになってしまったら、それはそれでつまらない。
それで最近、まとめて再放送されると聞いて見ています。
ドラマはドラマで、それなりに面白いと思い直しました。
松重さんのモノローグに、マンガにはない面白さが加わっているのが楽しいです。
あとはやはり、実際に料理を食べているシーンの良さですよね。
飲食店の中での出来事を丹念に描写する演出もいいのです。
こんなのを深夜に見せられたら堪らないですね。

 

 

 

ちなみにマンガのほうは数種類の本が出ています。

1997年発売の単行本(ISBN 4-5940-2137-9)

 古書店かメルカリでないと見つからないでしょう。
 旅エッセイ『釜石の石割り桜』収録。
 #1~#18

 

2000年発売の文庫本(ISBN 4-5940-2856-X)

 表紙が赤っぽいモノクロの井之頭五郎の絵のもの。
 これも古書店でないと買えないと思います。
 旅エッセイ『釜石の石割り桜』収録。
 #1~#18

 

2008年発売の新装版(ISBN 978-4-5940-5644-5)

 これまでの作品と、十年ぶりに描かれた新作が一本追加されています。
 『久住昌之×谷口ジロー×川上弘美による鼎談』収録。
 (『釜石の石割り桜』はオミットされています)
 #1~#19

 

2015年発売の第二巻(ISBN 978-4-5940-7337-4)

 新装版と同じ判型で、新装版に収録されていない新作が読めます。
 平松洋子さんの解説付き。
 #20~#32

 

2020年発売、新装版の文庫(ISBN:978-4-594-08478-3)

2020年発売、新装版第二巻の文庫(ISBN:978-4-594-08479-0)

 これらは多少の加筆があるようです。

 

2022発売、『谷口ジローコレクション17 孤独のグルメ1』
(ISBN:978-4-594-09154-5)
 #1~#18

2022発売、『谷口ジローコレクション18 孤独のグルメ2 散歩もの』
(ISBN:978-4-594-09155-2)
 #19~#32

 これらは原稿のスキャンからやり直し、雑誌サイズになった豪華版で、小冊子が付きます。

 

正直に書くと、最初に連載されていた第1話から第18話と、十年の隔たりがある第19話から第32話は別物です。
絵も話も、第19話からは激しく劣化していて読むに耐えません。
一応単行本を買って読んだのですが、酷すぎて悲しくなりました。
例えると、別人が似せて描いた同人誌という感じです。
ですからオススメするのは、お手軽な旧文庫版か、豪華な谷口ジローコレクション17ですね。

ちなみに。
ネットの飲食店レビューを見ていると、板橋の洋包丁というお店のことを「第12話で登場した大山の洋食屋さん」と書いてあることがありますが、これは間違いです。
洋包丁は合ってますけど、マンガに登場したお店のモデルとなったのは大山店のほうです。
板橋の洋包丁の近くに東武東上線は走っていませんし、お店のレイアウトだって全然違います。
間違いようがないのですがねぇ、そういういい加減なレビューがあるのです。
ちなみにあの性格が悪い店主は昔は実在したようですけど、今はいないそうです。

 

 

 

Spotifyで検索すると、ドラマのBGMが多数ヒットします。
街歩きするときに、イヤレシーバーで聴けば面白いかも。
五郎のような食べ歩きやモノローグが、ちょっとしたブームらしいですしね。
ただ私からしてみれば、それはわざわざやるようなことじゃないのですが。
中年男性が自然にやっていることだから、それを真似することが流行るのはちょっと変というか、笑えるというか……

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。